大阪公立大学と日本原子力研究開発機構は,蛍光X線分析にベイズ推定を応用することで,ガラス標準試料に1時間蛍光X線を照射して得られたスペクトルと同等の分析結果を得るために必要な測定時間を,7秒から3秒まで,4秒縮めることに成功した(ニュースリリース)。
エネルギー分散型の蛍光X線分析は非接触・非破壊分析である特徴を生かして,材料分析や環境分析の分野で広く利用されている。しかし,通常の蛍光X線分析には5分から10分程度を要している。そこで研究グループは,より迅速な手法が開発できれば,蛍光X線分析法が各段に普及するのではないかと考えた。
研究では分析化学と情報科学との融合を試みた。具体的にはベイズ推定の手法を取り入れたが,これまでベイズ推定を蛍光X線スペクトル予測に適応した例は報告されていなかった。
ガラス標準試料の蛍光X線スペクトルにベイズ推定を適応した結果,1s測定でも3600s測定のスペクトルと非常に近いスペクトルを取得でき,3600s測定のスペクトルと同等の分析結果は3sの測定で取得できるため,ベイズ推定を用いない場合に比べて計測時間を4s短縮することに成功した。
迅速に非接触・非破壊的に元素分析が可能となれば,ベルトコンベアなどで移動する工業製品や廃棄物試料の分析ができる,化学反応過程をモニタリングできる,環境分析おいてモニタリング解析できるなど,多くの分野に普及する可能性があるという。
研究グループは,今後,スペクトルにおけるピークとバックグラウンドの短時間での見極め方や,微量元素分析への適用可能性など基礎検討が必要だとしている。