JFCCら,パワー半導体の結晶欠陥イメージングに成功

ファインセラミックスセンター(JFCC),ノベルクリスタルテクノロジー,兵庫県立大学は,X線回折現象の一つである「異常透過現象」を利用し,世界で初めてβ-Ga2O3結晶内部の様々な格子欠陥を短い測定時間且つ非破壊で全数可視化することに成功した(ニュースリリース)。

パワー半導体として期待されるβ-Ga2O3は,格子欠陥を含まない完全な結晶を作れず,大面積にわたる欠陥を非破壊で検出・分類する手法の確立が重要な課題となっている。

β-Ga2O3の欠陥分布を調べるのに,非破壊で大面積の結晶に適用可能な手法はX線トポグラフィ観察法しかないとされているが,β-Ga2O3には原子番号の大きいGaが含まれるのでX線の吸収が強く,結晶内部の格子欠陥の分布はわからなかった。

研究グループは,高い完全性を持つ厚い結晶でしか起こらないX線の回折現象であるX線の異常透過現象を利用し,通常のデバイス作製に使用される厚さ約0.7mmのβ-Ga2O3全体に含まれる欠陥の全数検出に成功した。

格子欠陥のように原子が理想的な位置からずれて,ブラッグの法則を満たさない領域があると,そこでは異常透過が起こらなくなり,局所的に透過波の強度が低下する。従って,結晶全体として異常透過を発生させた状態で透過波の強度分布を観測すれば,X線の弱いところに格子欠陥があると判断できる。

一方,結晶に含まれるすべての種類の格子欠陥を満遍なく減らすより,悪影響の大きい欠陥を優先的に無くす方がデバイスの性能向上には効率的なため,欠陥の種類を識別することも重要となる。

X線トポグラフィ観察法では,画像取得に用いる回折条件と格子欠陥の種類との相対関係によって欠陥のコントラストが変わる。この現象を利用し,複数の回折条件で同一場所の欠陥のコントラストを解析すれば,欠陥の種類を把握することができる。

実験に用いた結晶においては,成長方向と平行に伸びた,原子ズレの方向が異なる2種類の直線状の欠陥,および結晶表面と平行な面に存在し,成長方向の原子ズレをもつ曲線状の欠陥が主な欠陥種類であることがわかった。

この手法を更に高度化するために,X線を波動として扱う動力学回折理論を用いた計算を行なうことで,通常より約10,000倍強い透過波が得られる最適な回折条件を見出し,様々な面方位の結晶の欠陥分布をより高い面内分解能と短い露光時間で撮影することが可能になったという。

研究グループは,この成果を結晶開発に役立て,欠陥のデバイスに及ぼす影響とその機構を解明することで,β-Ga2O3パワーデバイスの高性能と高信頼性の向上に貢献するとしている。

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