早稲田大学とシンガポール南洋理工大学は,光造形3Dプリンタとめっきを組み合わせ,複雑な形状の金属・樹脂の精密3次元構造体を作製することに成功した(ニュースリリース)。
光造形型3Dプリンタを利用して,曲面上に高精度なプラスチック造形物を作製することは可能だったが,立体の表面だけでなく,内部表面にも金属を配置した金属・プラスチック複合材料部品や電子回路の作製はこれまでできていなかった。
また,3Dプリンタで造形したプラスチック造形物の表面全てにめっきを施すことは可能だったが,任意の箇所に金属を設ける技術ではなかった。
今回研究グループは,使用する樹脂に合わせて露光時間などを調整可能で,複数の樹脂を使用する光造形3Dプリンタ装置を開発し,標準樹脂と金属イオン含有樹脂を組み合わせた立体構造物を作製した。金属イオン含有樹脂に,選択的な無電解めっきを適用できるため,プラスチック上に綺麗な金属めっきを設けることが可能となった。
このアプローチには,①特定の金属パターンを有する複雑な金属・プラスチック3D部品を製造することができる,②高集積でカスタマイズ可能な3次元マイクロエレクトロニクスの造形が可能であるといったメリットがあるとする。
この研究は,光造形3Dプリンタとめっき技術を利用するものであり,解像度40μmで,複雑形状で,様々な金属・プラスチック複合材料部品,電子回路などを作製できる。このプロセスは,単純な原理のため,複雑なエレクトロニクスの製造が可能でありながら,「高価な製造装置」「複雑なプロセス」が不要となるという。
今回,様々なエレクトロニクスを自作できることを実証したため,次世代エレクトロニクスの製造が求められているロボット・IoTデバイスの開発に大きな効果を発揮するとする。研究グループは,実用的なヘルスケアIoTデバイスの作製,小型の自律ロボットの開発を共同研究者と共に進めている。
応用先を変更することによって,求められる機能や問題が変わるが,共同研究者とのディスカッションを行なうことで対応する。また,さらなるスペック向上に向けて,3Dプリンタの改良を行なっているといている。