ジャパンディスプレイ(JDI)は,通常の映像とデプスマップの両方が取得可能な撮影技術の開発に世界で初めて成功したと発表した(ニュースリリース)。
近年,自動運転やメタバースなど急速な市場の拡大が期待される分野において,人や建物等の形状や位置,更には色や模様等を正確に把握し,情報・データとして取り込むことが求められている。
現在,こうした要求に対応する技術として,ステレオカメラやToFセンサーが知られており,最近では解像度の向上や機械学習技術の進歩に伴って,高度な情報の取り込みが可能になっている。
しかし,その一方で距離や位置,色情報の取得には,センサーやカメラが複数必要になるなど,構造が複雑・大型化し,搭載する製品の大きさや取付け位置などの制約が大きくなっていた。
今回開発した技術では,同社の液晶パネル技術と日立製作所の光学と画像処理の融合技術を組み合わせ,1つのカメラで,通常の色情報を含んだ映像データと距離や位置情報を含んだデプスマップの取得を可能にした。
具体的には,一般的なカメラレンズユニットとイメージセンサーに,同社で開発した特殊なパターンを表示する液晶パネルを組み合わせ,撮影した映像から光学的物理量を抽出して演算することにより,1つのカメラで人や建物等の位置情報を立体的に取得し,デプスマップの生成が可能となる。また液晶パネル部分の表示モードを制御することにより,通常の映像撮影も可能だとする。
光学カメラのピントが合う位置から撮影対象の距離がズレると,撮影した映像にボケが発生する。ズレ量に伴ってボケも大きくなるため,このボケ量から距離を演算できるが,この技術では,更に液晶パネルによる特殊なパターンを重ねて撮影することにより,演算精度を向上させているという。
3Dセンサー市場は,2026年には約1.4兆円4に達すると予想されている。同社は2024年の参入を目標にこの技術によるカメラの小型化や性能向上等の開発を進め,より多くの製品・分野への搭載を容易にするとしている。