理研ら,心筋の脂肪酸代謝を可視化する近赤プローブ

理化学研究所,北海道大学,大阪大学は,心筋における脂肪酸代謝を光で可視化するための近赤外蛍光プローブを開発した(ニュースリリース)。

心筋における長鎖脂肪酸代謝を非侵襲的にイメージングする手法として,放射性ヨウ素で標識した長鎖脂肪酸類似体を利用したSPECT(単一光子放出コンピュータ断層撮影)が広く使用されている。

SPECTは高感度な心筋代謝イメージングを可能にするが,放射線を検出し画像化するための大掛かりな診断機器や,放射性物質による標識合成が必要であるなど,コスト面などで課題がある。

放射線を用いない非侵襲イメージング法として,波長700~900nmの近赤外光を用いるイメージングがある。研究グループは,長鎖脂肪酸に近赤外蛍光を発する色素を結合させて,心筋における脂肪酸代謝の近赤外生体蛍光イメージング技術の開発を試みた。

近赤外蛍光を発する長鎖脂肪酸の設計は,心筋代謝イメージングのためのSPECTプローブとして利用されているBMIPPを基本骨格とし,近赤外蛍光標識には,波長700nm以上で蛍光発光するAlexa680蛍光色素を用いた。この2種の分子を材料として,放射性ヨウ素の代わりにAlexa680を持つ近赤外蛍光を発する長鎖脂肪酸「Alexa680-BMPP」を合成した。

蛍光の最大ピークは近赤外波長領域にあり,励起光のエネルギーが蛍光のエネルギーに使われる変換効率(量子収率)は39%だった。これは,一般的な近赤外蛍光色素であるインドシアニングリーンの量子収率が1%程度であるのに比べて,高い蛍光輝度を示している。

また,Alexa680-BMPPは,コントロールの色素(脂肪酸と結合していないAlexa680)に比べ有意に心筋細胞に取り込まれることが分かり,蛍光性の長鎖脂肪酸として機能することが明らかになった。

生きたヘアレスマウスにAlexa680-BMPPを尾静脈から注入し,近赤外蛍光を観測したところ,マウスの心臓部位の近赤外蛍光強度は30分で最大に達し,徐々に減少した。心臓組織の蛍光イメージング画像から,Alexa680-BMPPがAlexa680に比べ5~6倍量心臓に取り込まれていた。

さらに,臓への脂肪酸の取り込みを増強するため24時間絶食させたマウスと,比較のため通常の飼料で飼育したマウスの心臓組織の近赤外蛍光イメージングを行なった結果,Alexa680-BMPPは心筋の生理的状態を観測できる蛍光プローブとして機能することが示された。

研究グループは,この近赤外蛍光を用いた心筋イメージング技術により,さまざまな心臓疾患研究への応用が期待できるとしている。

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