東大,可視・電波透過性透明反射遮熱フィルムを開発

東京大学の研究グループは,高い可視・電波性をあわせ持つ省エネガラス窓への応用に向けて,酸化物半導体ナノ粒子の近赤外表面プラズモン技術を用いた透明反射遮熱フィルムの開発に成功した(ニュースリリース)。

透明反射遮熱性能を持ったガラス窓や透明反射遮熱フィルムは,エネルギー消費の少ない建物や住宅や,低燃費・ハイブリッド・EV車などにおいて需要が高まっている。

従来の遮熱方法には酸化物半導体ナノ粒子を用いた光(熱)吸収型とAg系多層薄膜を用いた光(熱)反射型がある。前者はガラス窓が吸収した光(熱)の再放射により遮熱性に,後者は電波(高いマイクロ波帯域)透過性が低く通信に課題があった。

研究では,透明導電膜のSn添加In2O3(ITO)を用い,酸化物半導体のナノ粒子間界面制御を表面プラズモン共鳴に応用し,高い可視・電波透過性をあわせ持つ透明反射遮熱フィルムを実現した。

15nm程度の粒子サイズを持つITOナノ粒子は,近赤外領域で強い表面プラズモン共鳴を示す。これは,ITOナノ粒子内に10%のSn原子が均一に添加され,ナノ粒子それ自体が金属的性質を持つことに由来する。

さらに,得られたITOナノ粒子表面には分子リガンドが存在し,ITOナノ粒子同士が結合せずに2nm程度のナノ粒子間距離を維持した状態で存在している。研究では,これらの性質を持つITOナノ粒子とスピンコーティング法で作製されたナノ粒子薄膜の遮熱性能を評価した。

その結果,可視光の透過率は全波長領域で75%以上を維持し,反射率は20%以下を示した。また,ITOナノ粒子薄膜の曇り度を示す透過ヘーズ率は3%以下で,可視光の散乱もほとんどない。これは,ナノ粒子薄膜の表面平坦性が高いことに関係していることが明らかになった。

また,近赤外領域で60%程度の高い反射率および低い透過率を示した。観測の結果,ITOナノ粒子薄膜の表面および断面の局所構造形態には単一ナノ粒子が3次元積層されていることが分かった。

近赤外線反射は,ナノ粒子間界面で生じる光電場増強が重要な役割を果たすことが明らかになった。薄膜表面近傍のナノ粒子間界面に強い電場増強が観測されたことから,近赤外領域で観測された高い反射性能は,ナノ粒子間界面での強い光電場増強と密接に関係することが分かった。

また,ITOナノ粒子薄膜の熱線に対する遮熱性能の評価の結果,ITOナノ薄膜を付与した場合,熱線を遮蔽する能力を示した。このフィルムは,反射遮熱に向けた光熱技術であり,5G(6G)等で必要なマイクロ波帯域を遮断しないため,研究グループは,重要な材料として期待できるとしている。

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