中部大,熱の流出入を減らせる透明薄膜フィルム開発

中部大学研究グループは,ガラスやプラスチックの窓に貼り付けることで熱の侵入と放出を大幅に抑えることができる透明フィルムを開発した(ニュースリリース)。

今年の夏は以前に増して猛暑日が続き,エアコンの普及率が低い地域でも,初めてエアコンを設置する家庭が増えている。建物に限らず自動車の車内でも常時エアコンを使用しないと耐えられない。

その結果,エアコンの消費エネルギーはますます増加し,同時に外気温度の上昇という悪循環につながっている。室外から室内や車内への熱の流入を減らせば,エアコンの消費エネルギーと外気への熱放出も抑えることができる。

研究グループは,厚さ約10nmの銀膜と厚さ約30nmのセリア(酸化セリウム:CeO2)膜を貼り合わせた透明なフィルムを開発した。

ガラスやプラスチックの表面に貼り付けると保熱と遮熱の効果がある。銀は熱を吸収しにくく結果として放出しにくい性質を持ち,セリアは銀を保護する。両者を貼り合わせたフィルムの厚さは約40nmで,可視光の波長400~800nmより薄いため,可視光をほとんど透過して室内の明るさに影響しない。約5%延伸してもクラックは発生せず,曲面に貼り付けても膜質を保つことができる。

厚さ 3mmの透明プラスチックのポリカーボネート(PC)を窓として用いて外気温度50度,室内温度25度に設定した夏場を想定した実験では,窓にフィルムを貼ると窓の表面から室内に放射される(流入する)熱の温度を49度から26度に低下できることを確認。冷房の消費電力を約20%削減できるという。

逆に室内温度を25度,室外温度を6度の冬場を想定した実験では,窓の表面から室外に放射される(流出する)熱の温度を14度から7.8度に低下し,暖房の消費電力を冷房と同様に約20%減らせることがわかった。年間を通して冷暖房の消費電力を約20%減らせることを実験と計算の両方で確認した。

研究グループは,自動車関連メーカーと事業化を目指すとし,価格はフィルム代とガラスやプラスチックへの貼り付け作業費を含めて1平方メートル当たり1万円程度と見積もっている。これにより住宅やオフィス,自動車関連での需要に期待するとしている。

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