2023年車用フィルム・シート市場,前年比105.8%

矢野経済研究所は,国内の自動車用フィルム・シート市場の動向を調査し,製品セグメント別の動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

それによると,2021年の自動車用フィルム・シートの市場規模(国内メーカー出荷数量ベース,輸出分を含む)は前年比101.6%の1億3,912万m2。内訳をみると,内装用加飾フィルムは1,170.9万m2(前年比99.6%),外装用加飾フィルムは428.5万m2(同101.7%),ウィンドウフィルムは320万m2(同101.3%),合わせガラス用中間膜は1億1,920万m2(同101.7% ),車載ディスプレー前面板用樹脂シートは73万m2(同112.3%)。

自動車用フィルム・シートの需要は自動車生産台数と概ね連動しており,2020年の自動車生産台数減少に合わせて大幅に縮小し,2021年にはやや持ち直したものの,2022年は世界の自動車生産の3割強を占める中国でのオミクロン株流行に伴い上海,広州などの都市ロックダウンが実施され,生産・物流ともに停滞したことに加え,ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や米国の金利上昇による欧米市場の消費の冷え込みを受けたことで再び減少が見込まれるという。

ただ,2022年下期より中国でのロックダウンが解除され部材や車体などの流通が動き出したことで,自動車生産台数は急速に回復に向かっており,2023年の自動車用フィルム・シートの市場規模は前年比105.8%の拡大を予測した。

同社が注目する自動車用合わせガラス用中間膜は,安全性,防犯性,紫外線カット性などの基本性能を備える通常膜と,基本性能に加えて遮音や遮熱などの付加機能を有する機能膜に大別されるが,近年では走行時の騒音抑制を実現する遮音膜や,HUD(Head-Up Display:ヘッドアップディスプレイ)用くさび型中間膜を中心に機能膜の需要が増加しているという。

HUDシステムは安全性向上に効果的である一方で,プロジェクターからフロントガラスに投影された画像が二重写しになったりぶれたりすることでかえって安全が損なわれる恐れもある。中間膜メーカーでは,表裏面に僅かな角度をつけることで光の屈折を高い精度でコントロールし,鮮明な画像の投影を実現することで視認性を高めたくさび型中間膜を開発している。

近年では,車速や走行ルートなど表示可能な情報が限られていた従来型HUDと異なり,運転席から見える実際の風景にアラート情報(警告・警報など)やナビゲーション(行先案内)などの映像を重ね合わせるほか,センサーでリアルタイムに収集したデータをもとに道路上の重要な情報の投影が可能となるAR-HUD(拡張現実型ヘッドアップディスプレイ)の搭載に向けて,くさび型中間膜よりも広い二重像(ゴースト)解消エリアが求められるケースが増加している。これに対し,くさび型中間膜よりも広い画角の実現可能なAR-HUD向けのゴースト対策フィルムの開発,提案も進められているという。

フィルム・シートメーカーがE-CASE(Connected,Autonomous,Share & Service,Electric + Enviroment)や既存のOEM(自動車メーカー)といった従来の市場の外側にも目を向け,製品開発の幅を拡げていくことは新たな市場の芽を見つけることにもつながる。

既存の市場・ニーズへの追随ではない,発想を転換した製品開発や市場開拓に加え,OEM,Tier1(一次部品サプライヤー),Tier2(二次部品サプライヤー)など,従来のサプライチェーンの枠組みに入らないところで生まれつつある次世代の自動車関連市場に参入し,足場を固めていくことが求められているとする。

超小型モビリティや空飛ぶクルマなど次世代の自動車が実用化し市場に普及するまでには,今少し時間がかかると予測する。市場規模も小さいところからのスタートとなるため,足元の売上拡大にはすぐに結びつかない可能性も高いとみる。それでも,自動車市場に新規参入する企業との共同開発は従来の自動車では実現しなかった新たな需要獲得につながると期待している。

自動車用フィルム・シートメーカーは長年にわたりOEMやTier1の厳しい要求品質を満たす製品を開発,提案してきた。また,成熟した製品であれば価格がサプライヤー選定の大きなポイントとなる。

一方,次世代の自動車関連市場ではIT企業やベンチャー企業など異業種からの参入も多く,フィルム・シートを含む部材メーカーとの関係も,ユーザーとサプライヤーというよりも開発パートナーという位置づけになる傾向にあり,フィルム・シートメーカーからの技術提案や共同開発の余地も大きいという。

今後は各社の技術を新市場での展開の中で得られる新たな発想と組み合わせ,E-CASEの先にある次世代モビリティの共創を実現すること,そこに貢献する技術開発・提案をいかに進めていけるかが重要になるとしている。

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