情報通信研究機構(NICT),米ベル研究所,伊欄仏プリズミアン,豪クイーンズランド大学は,標準外径(0.125 mm)55モード光ファイバにおいてモード多重技術を駆使し,世界で初めて,標準外径の光ファイバで1.53Pb/s大容量伝送実験に成功した(ニュースリリース)。
増大し続ける通信量に対応するための新型光ファイバ研究が進み,近年は,既存製造設備でケーブル化が可能な標準外径の新型光ファイバを利用した伝送システムの研究開発が行なわれている。
NICTは,標準外径4コア光ファイバやシングルコア・15モード光ファイバを用いた伝送システムを構築して,それぞれ1Pb/sの伝送実験に成功した。標準外径光ファイバではコア数に限界があり,今後更なる伝送容量向上にはモード数の増加が必要だが,モード多重伝送では,モードごとの伝搬特性に差があると信号品質の劣化や信号処理負担の増大が生じるため,15モードを超える大容量伝送実験は報告されていなかった。
プリズミアンのシングルコア・55モード光ファイバ,NICTのモード多重送受信技術,ベル研究所及びクイーンズランド大学の設計・製作による多重反射位相板方式のモード合波器/分波器を利用し,NICTが伝送システムを構築し,合計1.53Pb/s光信号の25.9km伝送に成功した。
今回,55ものモード多重信号のMIMO処理を行なうために,高速かつ並列度の高い信号受信システムを構築し,全モードの信号を一括で受信した。受信後にMIMO処理を行なった結果,C波長帯の184波長において偏波多重16QAM信号のモード分離に成功した。
過去の15モード多重伝送と比較すると,モード数の増加に伴い,周波数帯域当たりのビット数が3倍以上(332ビット/秒/Hz)に向上した。今回の実験ではC波長帯を用いたが,今後,波長帯域をマルチバンド化していくことで更なる伝送容量の拡大を見込めるという。
現在,世界中でBeyond 5G情報通信社会の実現に向け開発が進められているが,通信デバイスや通信量等の持続的な増加に鑑み,Beyond 5G後の情報通信インフラ技術についても現時点から検討を始めておく必要がある。この成果は,Beyond 5G後を見据えた技術開発の重要な一歩だとする。
研究グループは今後,更なる伝送容量の拡大を目指し,周波数帯域を拡大した大容量伝送を検証していくとともに,長距離化,スイッチング等の要素技術の検討を進め,ネットワーク化の可能性を探求するとしている。