矢野経済研究所は,国内のメタバース市場を調査し,市場概況,メタバース事業者の動向を明らかにした(ニュースリリース)。
メタバース(Metaverse)は明確に定義されていないが,この調査においては,仮想と現実を融合したインターネット上に構築された3次元の仮想空間で,ユーザー同士が自分のアバターを操作して交流したり,様々なサービスやコンテンツが利用できる環境をメタバースと定義した。なお,ゲーム専業のサービスは対象外したとする。
それによると,2021年度の国内メタバース市場規模(メタバースプラットフォーム,プラットフォーム以外(コンテンツ,インフラ等),XR(VR/AR/MR)機器の合算値)は744億円と推計,2022年度は前年度比245.2%の1,825億円まで大きく成長すると見込む。
新型コロナウイルスの影響を受け,バーチャル(仮想空間)で代替するサービス需要が急増した。一方で,コロナ禍が継続するなかで,リアル(現実)で実施すべきものと,費用対効果という観点から,オンラインでも可能であるものとのすみ分けが明確化しつつあることから,バーチャル関連サービスの需要は今後も継続するものとみている。
こうしたなか,国内メタバース市場は法人向けが先行して立ち上がり,まずビジネス用途のサービスが普及し,以降消費者向け市場に浸透していくと予測している。2020年から2022年にかけて様々なメタバースプラットフォームが立ち上がり,大手企業もメタバース市場に次々と参入し,事業者間の協業や業務提携などにより様々な実証実験を行ないながら,今後の事業化を目指しているという。
メタバースを活用したビジネスは,メタバースプラットフォームを中心に様々なコンテンツが提供されている。メタバースプラットフォームは大きくBtoB/BtoBtoCとBtoCモデルに分類することができるが,現状,国内の主要プラットフォームは前者が多いとみる。また,消費者向けに対しては収益化していないプラットフォーマー(プラットフォーム運営事業者)が現時点では多いとみている。
メタバース市場の主要プレイヤーはプラットフォーマーとサービスやコンテンツ提供事業者となるが,プラットフォーマーはサービスやコンテンツ提供事業者に対して仮想空間を提供し,毎月のシステム利用料(サブスクリプションモデル),開発費用(要望に応じてカスタム開発),コンテンツの販売や物販を行なった場合の手数料などで収益化している。
しかし,現下,黎明期であることから,プラットフォーマーがサービスやコンテンツを開発して提供するケースやインフラ(開発環境)提供事業者がサービスを提供するケース,企画立案から一気通貫でサービスを提供する事業者など様々であり,各事業者はビジネスモデルを多角化しながら対応しているとみられるという。
今後,メタバース事業に参入する企業が増え,仮想空間を利用したオンラインイベント(展示会やセミナー等)やシミュレーション,教育・トレーニング、インターネット通販での接客やショッピング体験など,様々な産業分野において活用が拡大し,さらにハードウェアと技術の進展により消費者向け市場にも広く普及するとみられることから,2026年度には市場規模が1兆円を超えるものと予測した。
また,メタバースの普及には,バーチャル(仮想)とリアル(現実)をシームレスに連携する技術やサービスも重要になってくる。
XR(VR/AR/MR)機器を用いて入る世界を本質的なメタバースとみる事業者もいるが,現状のハードウェアと技術では制約が多い。今後,このような技術の進展がどう進むかによって,メタバース市場の成長速度も変わる可能性があり,ハードウェアと技術の進展はメタバース市場成長の重要な要因になるという。
参入事業者は,まずはPCやスマートフォンを中心にサービス提供を行なうものとみており,ユーザー(消費者)が日常的に利用可能なサービスから普及するとみているが,将来的にはXR機器の技術的進化,バリエーションの増加,普及台数の拡大とともに,消費者向けが大きく成長し,メタバース国内市場全体も拡大するものとしている。