ニコンは9月2日,金属アディティブマニュファクチャリング(金属AM)装置メーカーである,独SLM Solutions Group AG(SLM)の完全希薄化後発行済全株式を,ニコンの子会社であるNikon AM. AGを通じて任意的公開買付けを行なうと発表した(ニュースリリース)。取引総額は622百万ユーロ(840億円)。
この公開買付けは,SLM株主に対して1株あたり現金20.00ユーロで買付けを実施する予定。買付価格はSLMの過去3か月間の平均株価に対して83.7%のプレミアムの水準となる。SLMの株式及び転換社債を保有するElliott International, L.P.,ENA Investment Capital LLP及びSLM社創業者のHans-Joachim Ihde氏は,今回の取引に賛同しており,ニコンはSLMの完全希薄化後全株式の61.1%を既に確保しているという。
ニコンは,2030年のありたい姿として「人と機械が共創する社会の中心企業」となることを目指し,デジタルマニュファクチャリング事業を戦略事業と位置付けている。とりわけ,「3Dプリンティング」と呼ばれる金属を積層して加工する金属AMは,将来大きな成長が期待できる有望な領域とみている。
今回の買収により,ニコンは,金属3Dプリンターの方式のうち金属粉を噴射しレーザーを当てて造形するDED(Directed Energy Deposition)方式を採用した「光加工機」に加え,現在主流となっているL-PBF(Laser Powder Bed Fusion︓平らに敷き詰められた金属粉にレーザーを当てて造形する装置)方式も獲得することになる。
同社はこれまで小型で精緻なものは従来のDED方式の金属プリンターで既に対応できていた一方,大型のものを品質良く作ることは難しい状況だった。SLMは,ニーズの高い大型部品の製作において,12本のマルチレーザーを使って高速に造形できる技術を持っている。
今回の買収により,ニコンは成長が期待される金属AM領域のグローバルリーダーとして,開発とイノベーションを加速させ,新たな革新的な製品・サービスを創出し,顧客層を拡大することができるようになるとしている。