JAMSTECら,小惑星リュウグウの分析結果を発表

海洋研究開発機構(JAMSTEC),高輝度光科学研究センター,国立極地研究所,分子科学研究所,神奈川大学,米カリフォルニア大学 ロサンゼルス校,英オープン大学,大阪大学,名古屋大学らは,小惑星リュウグウ粒子の分析を行ない,最初の研究成果が英国のオンラインジャーナル「Nature Astronomy」に掲載された(ニュースリリース)。

小惑星リュウグウは約46億年前に太陽系が形成された頃の有機物や含水鉱物を今も残している可能性があり,直接採取が待ち望まれていた。小惑星探査機「はやぶさ2」は,リュウグウに到着して2度の試料採取に成功した。

研究グループは大型放射光施設SPring-8 BL20XUのX線CTにより各粒子の形状や内部構造を取得し,どの部分がどの分析に適しているかを決定した。分析に基づくリュウグウ粒子の元素組成は,先の報告と矛盾がなく,「リュウグウは太陽系全体の元素組成を代表する始原的な物質である」という確証を得た。

また,水が関与して形成したと考えられる鉱物が多く見られ,リュウグウには過去に氷が存在し,その氷が溶けてできた水と,もともと含まれていた鉱物が反応し,採取した鉱物が作られたと考えられた。

さらに,超高解像度二次イオン質量分析装置(NanoSIMS)で分析したところ,水素と窒素は,地球と比べると重い同位体成分に富んでいることがわかった。これは,宇宙塵と良い一致を示すばかりではなく,彗星の値に近い傾向も見られた。

このことは,リュウグウ粒子は熱の影響をあまり受けず,形成当時の物質科学的情報を保っていることを示唆し,これらの粒子は太陽系の外縁部で形成後,現在の位置まで移動したと考えられるという。

走査型透過X線顕微鏡(STXM)と超高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)により,脂肪族炭化水素に富む有機物は,粗粒の含水ケイ酸塩鉱物と複雑に入り混じった組織を持つことが明らかになった。この組織は,有機物が水の存在下で鉱物と反応したことを示す,世界で初めての直接的証拠。

脂肪族炭化水素に富む有機物は,30度以上の温度になると分解するという報告がある。つまり,脂肪族炭化水素に富む有機物の存在から,リュウグウは30度以下の温度しか経験していないと考えられる。一方,どのような種類の有機物が該当する領域に含まれるのかは,今後の研究に続く。

これらにより,「小惑星リュウグウを形づくった微粒子は,かつて太陽系の外側で形成され,水と有機物がたくさん含まれていた。このような始原的な小惑星は,その後太陽系の内側までやってきて,地球に水や有機物を供給した」という仮説を立てる事ができた。

研究グループは今後,小惑星リュウグウ粒子の更なる分析や小惑星ベンヌの研究により,この仮説の検証ができるとしている。

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