理科大ら,光電脈波特性の推定誤差の評価に成功

東京理科大学,千葉大学,新潟食糧農業大学は,PPGの時系列データを再帰定量化解析(RQA)することで,短時間の時系列データでも系の特性を1%以下の誤差で推定できることを明らかにした(ニュースリリース)。

PPGとは,指先や耳たぶなどに光を照射し,反射もしくは透過する光の量を計測することによって,生体内情報を取得する方法。例えば,心拍数,呼吸数,血圧,酸素飽和度,血管の状態評価などに使用され,測定が非常に簡便で非侵襲,安価などの利点がある。

一方で,ウェアラブルデバイスを使用して測定を行なう場合,測定ノイズやモーションアーチファクトの影響で,PPGからの情報抽出が大きく影響を受ける。ノイズをフィルタリングする場合,系の非線形ダイナミクス特性が保持されず,高度な解析への適用ができなかった。

また,PPG特性の非線形時系列解析は,時系列データの長さに大きく影響されるが,実用的な応用の場面においては,得られる時系列データの長さには制限がある。そこで,研究グループは短時間の時系列データに対してRQAを適用し,定量化された各パラメータの値からその妥当性を評価した。

最初に,健康な被験者を対象に,近赤外光を利用した反射型PPG測定を行なった。次に,得られたデータからリカレンスプロットを作成後,RQAによる非線形時系列解析を行なった。RQAでは以下の4種類の値を定義し,各値の定量化を行なった。

① 決定率(DET): 時系列データが決定論的であるかどうかに関する指標
② 斜線最大長(Lmax): アトラクタの軌道の安定性に関する指標
③ 斜線長さの平均(L): 動的システムの平均予測時間に関する指標
④ エントロピー(ENTR): リカレンスプロットの複雑性に関する指標

解析の結果,DETやENTRなどの値から,短いPPGデータでも1%以下の誤差で推定できることが示唆された。一方で,Lmaxについては小さい誤差に抑えるために長い時間が必要となること,Lについてはノイズの増加に伴って許容される最小長さが減少することがわかった。

以上の結果から,短期間の時系列データでも決定論的に推定できることを明らかにした。また,時系列データが決定論的である場合,ダイナミクス特性はRQAを使用して評価でき,時系列データの長さの関数として推定誤差を計算できることも突き止めた。平均予測時間を推定するために必要な時系列データ長の下限値を見積もることもできた。

研究グループは,光電脈波のデータ解析をウェアラブルデバイス上で行なうことにより,個人に合わせた健康管理システムを構築できる可能性があるとしている。

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