東北大学と東北大発ベンチャーのXMATは,3D測量技術と拡張現実を組み合せて活用することにより,埋設物の精度の高い可視化技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
埋設物調査の従来技術としては,電磁波レーダー法により地表面の位置から埋設物の位置を推定していた。電磁波レーダー法は,電磁波をアンテナから地表面に向けて放射し,その電磁波が土と電気的性質の異なる物質,例えば,埋設管や空洞等との境界面で反射され,再び地表面に出て受信アンテナに受信され,この送信から受信に到るまでの時間か
ら,反射物体までの距離を推定する。
電磁波レーダー法の特徴として,平面的な位置は距離計を内蔵した装置を移動させることにより位置情報を得ることができるが,地表面の湿潤状態や埋設管の品質等に影響を受けやすく,精度が課題だった。さらに,電磁波の応答しない環境への適用が困難だった。
また,拡張現実技術を用いた埋設物の可視化の開発例はあったが,3D CAD等で作成した3Dモデルを投影し,当初設計していた3Dモデルと実際に施工したものとの比較で出来形管理をする用途だった。建設工事においては,当初の設計通り寸分の狂いなく完全に施工を再現することは難しく,従来の拡張現実を用いた可視化技術は,施工された情報そのものを可視化するものではなかった。
これに対し,開発した技術は,新規埋設管敷設工事作業中に予め3Dレーザースキャナやフォトグラメトリの活用により,敷設された埋設管情報を3D点群情報として取得する。
拡張現実情報としてウェアラブルグラスに3D点群情報を投影する場合,3D点群取得時とウェアラブルグラス上での座標系が異なるため,座標変換が必要となる。そのため,ウェアラブルグラスにおける基準座標として認知するためのQRコードを予め用意しておき,敷設された埋設管と同時に3次元測量するといった工夫が必要となる。
今回の開発技術は新規埋設管敷設施した後のフェーズに効果を発揮する。埋設管交換工事の例では,掘削の際に誤って埋設管を破壊させるリスクが低減し,掘削範囲を最小限にすることが可能となり,掘削・埋戻・廃棄土量を最小限に抑制が可能となるという。
また,その他の活用事例として,コンクリートのコア抜き調査の場合,鉄筋位置を浮かび上がらせることで,既存の鉄筋を損傷させること無くコアを抜くことが可能となる。研究グループは今後,この開発技術が国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)へ登録されるよう実績を積み重ね,実用化を目指すとしている。