トーヨーカラーは,ブルーライトから有機EL素子を保護することで,有機ELディスプレーの劣化を抑制できることを実証し,同社が開発したブルーライトカット剤を用いて380~420nmの波長をカットすることで,有機ELディスプレーの長寿命化を可能にした(ニュースリリース)。
ブルーライト(380~500nm)は可視光線の中で波長が短く,比較的強いエネルギーをもつ。紫外線(~380nm)が有機物を劣化させることは広く知られているが,ブルーライトもまた,紫外線と同様に素材を劣化させることが指摘されはじめている。
有機ELディスプレーはその画質の高さからハイエンドモデルのスマートフォンやテレビなどで採用が進んでいるが,特に青色素子の耐久性が低く時間の経過とともに画質が劣化するため,液晶ディスプレーと比較し製品寿命が短いといわれている。
有機EL素子の劣化要因としては素子が繰り返し発光することや紫外線が挙げられ,これまで様々な対策がなされてきた。ブルーライトによる影響も劣化要因のひとつと推定されていたが,実用に耐えうる適切なブルーライトカット剤がなかったこともあり,これまで証明はされていなかった。
今回同社は,有機エレクトロニクス分野の最先端実証研究機関である山形大学有機エレクトロニクスイノベーションセンターの協力のもと,ブルーライトが有機EL素子に与える影響を実証した。同社のブルーライトカット剤を用いて有機EL素子を保護することで,現行構成と比較して電圧上昇を約60%抑制することができるという。
同社が開発した高耐性ブルーライトカット剤は独自の構造により,優れたブルーライトカット性能を有する。少量添加でブルーライトカット機能を付与でき,また要望に応じてブルーライトのカット域を一定範囲で任意に制御することも可能だという。
耐光性・耐熱性が非常に高く,長期的に劣化しないため耐久財用途に向くほか,350℃もの高温に耐える製品もラインナップしており,これまで使用できなかった加工プロセスや過酷な使用条件でも使用できるという。
これにより,有機ELディスプレーの寿命を延ばすことが期待できるほか,より過酷な使用環境での耐久性が求められる車載用途や屋外のサイネージなどへの展開も可能になる。さらに,円偏光板レスでも劣化を十分に抑制できることから,フォルダブル/ローラブル端末の用途拡大が期待されるとしている。