富士キメラ総研は,単価の高い機能性塗料の採用増加などで世界的に拡大が予想される塗料の世界市場を調査し,その結果を「2022年 機能性塗料市場・グローバル展開と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,用途別塗料17品目の世界市場は,2020年に新型コロナウイルス感染症流行の影響で縮小したが,2021年には経済活動の再開とともに回復した。また原料価格高騰により,数量ベースと比べて金額ベースの伸びが大きいという。
主体は建築用であり2021年は前年からの回復に加え,住宅需要増など,市場は前年比18.0%増となったという。2022年時点では回復が遅れている地域もあるが,今後はアジアやアフリカでの建築需要やインフラ整備により,市場は拡大していくと予想する。
原料であるナフサの価格は,2022年1Q時点で2017年の約1.6倍に達した。輸送コストの高騰や,フッ素樹脂がEVや半導体に優先供給されている事から,さらなる値上がりを予想する。
また,用途別塗料21品目の国内市場も2020年は新型コロナ流行の影響を受けたが,2021年は経済活動の再開により一部の品目を除いて前年を上回った。主体は建築用であるため,新築着工件数の減少により需要減少が懸念されるが,建築物の塗り替えや橋梁などの補修・補強工事,自動車生産の需要が堅調に推移するとみている。
VOC(揮発性有機化合物)排出対策として水系塗料や粉体塗料,無溶剤塗料,UV硬化塗料への切り替えが推進されてきた。水系塗料は置き換わりが一巡しているが,自動車用では水系化が推進されているという。粉体塗料は金属製品用で切り替えが進んでいくとみる。またバイオ樹脂塗料の開発,カーボンニュートラルへの対応も進められているが,バイオ樹脂塗料は価格が普及へのネックになっているという。
機能性塗料の国内市場は,塗布することで一般的な表面保護や美観性以外に耐候性や防食性,耐熱性などの高機能性を付与する塗料を対象とした。機能性塗料は参入各社が注力し,ユーザーにも付加価値が認められ存在感を増しているという。2020年の新型コロナ流行の影響も,2021年は経済活動の再開によって市場は伸びており,今後は堅調な拡大を期待する。
物理・化学的機能を付与する塗料は,船底防汚塗料のほか,高速道路の大規模補修工事のため橋梁やトンネルの補強に用いられるコンクリート剥落防止工法用材料,連続繊維シート補強工法用材料が伸びている。熱的機能では薄膜化や美観性が評価された耐火塗料が伸長しているという。
光・電気的機能を付与する塗料は総体的に堅調であり,爆発事故防止を目的とした帯電防止塗料などが微増している。環境対応・その他では新型コロナの流行により急速に需要が高まった抗ウイルス塗料やVOCフリーのため溶剤塗料から置き換えが進む粉体塗料が伸びていると見ている。
このうち抗ウイルス塗料の国内市場は,内装用塗料のうち,抗ウイルス性,抗菌性,消臭,防藻・防カビ性などの機能を付与した製品を対象とし,漆喰塗料と光触媒塗料に大別される。学校や公共施設,工場向けが主体で,2019年頃からテープ状やシート状製品への採用によってインフルエンザ対策として採用され市場が拡大した。
2020年以降,新型コロナの流行に伴い,ウイルス対策の意識が高い消費者を中心に住宅向けの需要が急増した。また,参入メーカーが新型コロナウイルスへの効果を実証したことで光触媒塗料の認知が広がり,2021年も前年比2倍以上の伸びとなったという。
住宅向けではより安価な抗ウイルス壁紙との競合があることや,ウイルス対策への注目度が下がっていることで,今後市場の伸び率は鈍化するとみているが,2025年頃からは塗り替え需要により拡大が期待されるとしている。