京都大学の研究グループは,波長変換材料を介した半導体接合法を提案,開発するとともに,この技術を用いた太陽電池を作製し,発電性能の向上を実証した(ニュースリリース)。
半導体材料を複数積層した多接合太陽電池は,気相成⻑法により作製されてきたが,格⼦整合の制限のため,理想的な吸収波⻑帯の半導体の組み合わせの多接合太陽電池を作製することが困難だった。
これに対しウエハー接合法は,格⼦整合にとらわれることなく⾃由な組み合わせの異種半導体材料の積層を可能とし,近年では発電効率の⾼い多接合太陽電池が作製されている。
研究では,受けた光をより波⻑の短い光へと変換する上⽅変換材料とに着⽬し,このような材料を介したウエハー接合技術の提案と開発を⾏なった。短波⻑光への変換により,ある半導体材料に吸収されなかった光成分が,同じ半導体材料ないしバンドギャップエネルギーの近い半導体材料に吸収され発電に有効に利⽤される,光のリサイクルが可能となる。
この技術は,接合の形成と同時に界⾯の光学的機能を発現させる新しい半導体プロセスの発想だとする。実験的実証として,上⽅変換ナノ粒⼦をハイドロジェル中に分散させた接着剤を作製し,それを介して,多接合太陽電池の上側のセルを模したSi薄膜とSi太陽電池のウエハーを接合した。
その結果,上⽅変換材料の無い太陽電池と⽐較すると,この⼿法で作製した太陽電池では,Si太陽電池への⼊射光がより吸収されやすい波⻑帯に変換され,集光型太陽電池モジュールを模したレーザー照射下において,2割程度の電流の増⼤,3割程度の発電効率の上昇を観測したという。
界⾯材料にこのような機能性材料を採⽤することで,単⼀の作製⼯程で⾼性能な接合形成と光機能の発現という⼀⽯⼆⿃の⾼効率化が可能になり,簡便(低コスト,⾼スループット)でかつ⾼性能な光・電⼦デバイスの⽣産プロセスの実現につながる。
例えば,波⻑変換機能を持つ接合界⾯により,多接合太陽電池において太陽光から,各発電層の半導体材料のバンドギャップエネルギー値に適した波⻑に変換し⼊射させることができるようになる。加えて,発電層間の電流整合の調節にも有効であるため,⾼発電効率化につながるという。
また,光集積回路・光コンピューターにおいて,光源を成す半導体層からの発光を,接合された変調器,導波路,受光器といった素⼦のそれぞれに最適な波⻑へと変換することで,⾼効率な信号処理が可能となることなどが期待される。研究グループは今後,この接合技術を活⽤した⾼性能な多接合太陽電池やマルチカラーLEDといった光デバイスの開発へと展開するとしている。