工繊大,複数の短パルス光の伝播をスロー撮影

京都工芸繊維大学の研究グループは,ピコ秒といった極めて短い時間間隔で発生する複数の光が伝播する様子を,一度の露光でスローモーション動画像として記録する技術の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

これまで研究グループは,3次元画像技術であるホログラフィーと超短パルスレーザーを組み合わせた,超短光パルスの伝播をスローモーション動画で記録可能な技術に関する研究を行なってきた。

それにおいて,ある1つの超短光パルスが光学部品中や拡散板上を伝播する様子を記録・観察した例は報告しているが,この技術を用いてピコ秒やそれ以下の極めて短い時間間隔で複数の超短光パルスが伝播する様子を記録・観察した例は報告されていなかった。

今回,研究グループの超短光パルスが伝播する様子を可視化する技術を応用することで,1.78ピコ秒の極めて短い時間間隔で発生する2つの超短光パルス光の伝播をスローモーション動画として記録・観察することに成功した。

これまでに,拡散板や平板構造の光学部品中を伝わるある瞬間の超短光パルスを記録した例は報告されていた。しかし,ピコ秒やそれ以下の極めて短い時間間隔で伝播する複数の超短光パルスや動く物体は,通常のカメラではそれぞれの動きを分解できず重さなって記録されてしまうため記録・観察することは困難だった。

研究で提案した技術では,極めて短い時間間隔で2つの超短光パルスを発生させる遅延光学系と呼ばれる光学システムを開発・導入し,さらに2つの動画を空間的に分割して記録する手法を導入することで,極めて短い時間間隔で発生する複数の超短光パルスを記録・観察できるという。

実証実験として,1.78ピコ秒の時間間隔を与えた拡散板上を伝播する2つの超短光パルスを記録した。実証実験を行なう上で,光が伝播する様子を分かりやすくするために,拡散板には解像力テストチャートのパターンを貼り付けて使用した。その結果,それぞれの超短光パルスが伝播する様子を重畳することなく,スローモーション動画として観察することに成功した。

今後の課題としては,細胞の観察や材料加工に適用するには,観察範囲が広すぎること,微弱光の検出が困難であることが挙げている。これは,顕微鏡光学系など拡大観察が可能なシステムを導入していないことや記録時に余分な光が発生していることが主な原因だという。

また,細胞の観察や材料加工で照射される超短光パルスの数はより多数であるため,研究グループは今後,記録できる超短光パルスの数を増加させる新たな光学系の開発も行なうとしている。

その他関連ニュース

  • エドモンド,超短パルス用ミラーがInnovators受賞 2024年08月29日
  • NTT,世界で初めて高精細な音の見える化を実現 2024年07月25日
  • エドモンド,超短パルス用ミラーを発売 2024年05月27日
  • 名大ら,高速カメラによるプラズマ計測手法を開発 2024年05月07日
  • 【OPIE】NICT,自然光デジタルホログラフィー展示 2024年04月26日
  • 農工大ら,ホログラフィでフルカラー動画投影を実現 2024年01月29日
  • 東大,光パルス列でナノ秒時間領域の撮影問題を解決 2023年12月21日
  • SP,アト秒科学向け新技術を発表 2023年06月29日