京都大学の研究グループは,超大面積(3~10mmΦ)で単一モード動作可能なフォトニック結晶レーザーを実現するための設計指針を確立した(ニュースリリース)。
従来の半導体レーザーは,光出⼒増⼤のために光出射⾯積を拡⼤すると,発振モードが多モード化して,出射されるビーム品質が劣化し,集光が困難になる。従って,レーザー加⼯や⾦属3次元プリンタ等の⼤きな光出⼒が要求される⽤途において,気体レーザーや固体・ファイバーレーザー等の⼤型・⾼価・低効率なレーザー光源が利⽤されている。
そこで研究グループは,従来の課題を克服するフォトニック結晶レーザーの開発を進めてきた。このレーザーは,光を増幅する活性層の近傍にフォトニック結晶を設けており,フォトニック結晶層の内部を伝搬する光波の相互結合を制御・活⽤することにより,原理的に,⼤⾯積・単⼀モード動作が可能。
最近では,2つの空孔をxおよびy⽅向に4分の1波⻑だけずらして重ねた「2重格⼦フォトニック結晶」と呼ばれる独⾃の共振器構造を提案した。 この構造では,基本モードを閉じ込めつつ⾼次モードの漏れ損失のみを増⼤することが可能となる。
この設計に基づき,これまで,0.5mmΦ〜1mmΦデバイスにて10W級~数10W級動作を実験的に実証するとともに,直径1mmΦ程度以上での単⼀モード動作の実現可能性を理論的に⽰した。さらに,開発したフォトニック結晶レーザーを搭載した光測距システム(LiDAR)とともに,短パルス(数10ピコ秒以下)かつ⾼出⼒(数10W以上)で動作可能なレーザーの開発にも成功した。
ただし,レーザーをさらに⼤⾯積化(3~10mmΦ)したとき,単⼀モード動作が維持出来るかどうかについては理論解析がなされていなかった。また,レーザー加⼯等の応⽤で要求される100W〜1kW級の光出⼒を実現する具体的な超⼤⾯積デバイスの設計についても,明らかになっていなかった。
今回,研究グループは,フォトニック結晶において,⾯内を伝搬する光波が損失を伴わずに相互結合する強さ(エルミート結合係数)に加えて,上下への放射を伴いつつ相互結合する強さ(⾮エルミート結合)にも着⽬して理論解析を⾏なうことにより,超⼤⾯積(3~10mmΦ)デバイスにおいて単⼀モード動作を実現するための普遍的な条件を⾒出した。
さらに,上記の条件を満たす具体的なフォトニック結晶レーザー構造の設計にも成功した。研究グループは今後,今回設計を⾏なった超⼤⾯積(3〜10mmΦ)フォトニック結晶レーザーを実際に作製し,100W~1kW級の単⼀モード動作を実現していくとしている。