千葉大学の研究グループは,3次元画像技術であるホログラフィーの特長を利用して,ハイスピードカメラのフレームレートよりも2倍高速で3次元動画を撮影できる技術,「時間超解像ホログラフィー」を開発した(ニュースリリース)。
研究グループは,3次元画像技術であるホログラフィーの特長を利用して,ハイスピードカメラのフレームレートよりも高速に動画撮影できる技術「時間超解像ホログラフィー」を開発した。
この技術では,ホログラフィーの干渉縞をハイスピードカメラで撮影する。このとき,参照光の入射角度を適切に設定することで,ある一枚の画像に複数の干渉縞を多重化して記録できる。研究では,参照光の入射角度を音響光学変調器によって高速に切り替え,異なる瞬間に形成される二種類の干渉縞を一枚の画像に多重化して撮影することに成功した。
開発した時間超解像ホログラフィーの有効性を確認するために,円分度器が毎秒15回転で高速回転する様子を撮影した。ハイスピードカメラのフレームレートを6,000fpsに設定し,まずは時間超解像ホログラフィーを利用せずに撮影した。
その結果,円分度器の目盛りが0.9度ずつ変化している様子が読み取れ,0.9[度/フレーム]×6000[fps]÷360[度/回転]=15[回転/秒]から,設定した回転速度とよく一致した。次に,時間超解像ホログラフィーを利用して撮影したところ,円分度器の目盛りが0.45度ずつ変化している様子が読み取れた。これはハイスピードカメラのフレームレートの2倍となる12,000fpsで動画像を撮影できていることを表している。
次に,ハイスピードカメラのフレームレートを87,500fpsに設定し,スプレー缶からの無色透明なガス流を時間超解像ホログラフィーで撮影した。人間の目や普通のカメラでは見えない透明なものも,光の位相を記録できるホログラフィーを利用すると可視化できる。
その結果,ガスがスプレーノズルから噴射された後,時間の経過とともに徐々に噴射量が増大していく様子が観察できた。噴射開始から約50 リ秒(0.05秒)が経過すると,ガス流の内部に渦状の特徴的な分布が生じている様子を捉えることもできた。
研究グループはこの成果を進展させ,画質や計測精度を低下させることなく実現可能であると示されている6倍の高速化に挑戦する。また,信号処理や機械学習などの手法を融合させ,将来的には10倍を超える高速化を目指す。この成果は,高速すぎて詳細が明らかにされていない物理現象の解明や未知の現象を発見する足掛かりになるとしている。