筑波大ら,ダイヤに10兆分の1秒の磁化を観測

筑波大学と北陸先端科学技術大学院大学は,近赤外のフェムト秒パルスレーザーを円偏光にして,NVセンターを導入した高純度ダイヤモンド単結晶に照射し,結晶中に発生した超高速で生成・消滅する磁化を検出することに成功した(ニュースリリース)。

現在,磁気センサーの中で最も高感度なのが超伝導量子干渉素子(SQUID)で,1nT(ナノテスラ)以下まで検出できる。また,ダイヤモンドのNVセンターと走査型プローブ顕微鏡(SPM)技術を組み合わせることで,数十nmの空間分解能を持つ量子センシングが期待されているが,時間分解能はマイクロ秒の範囲にとどまっていた。

研究では,波長800nmの近赤外パルスレーザー光を𝜆⁄4波長板により円偏光に変換し,NVセンターを導入した高純度ダイヤモンド単結晶に励起光として照射した。その結果,逆ファラデー効果により,ダイヤモンド中に磁化を発生できた。

この磁化が生じている極短時間の間に直線偏光のプローブ光を照射すると,磁化の大きさに比例してプローブ光の偏光ベクトルが回転する(磁気光学カー回転)。磁気光学カー回転の時間変化を測定した結果,逆ファラデー効果で生じるダイヤモンド中の磁化は,約100フェムト秒の応答として誘起されることが確かめられた。NVセンターを導入していないダイヤモンドでも磁化は発生するが,導入すると,発生する磁化が増幅された。

次に,励起レーザーの偏光状態を直線偏光→右回り円偏光→直線偏光→左回り円偏光と逐次変化させることで,波長板の角度とカー回転角(𝜃)の関係を調べた。

すると,NVセンターを導入する前の高純度ダイヤモンド単結晶では,逆ファラデー効果を示すsin 2𝜃成分および非線形屈折率変化である光カー効果を示すsin 4𝜃成分のみが観測された。一方,NVセンターを導入したダイヤモンドでは,それらの成分に加えて,新規にsin 6𝜃の成分を持つことが明らかになった。

さらに,励起光強度を変化させながら各成分を解析したところ,sin 2𝜃成分およびsin 4𝜃成分は励起光強度に対して一乗で増加するが,新規のsin 6𝜃の成分の大きさは励起光強度に対して二乗で変化した。

これらのことから,sin 6𝜃の成分は,NVセンターが有するスピンが駆動力となり,ダイヤモンド結晶中に発生した非線形な磁化(逆コットン・ムートン効果)であることが示唆された。また,この付加的で非線形な磁化により,磁化の増幅が説明できた。

この非線形な磁化による磁場検出感度を見積もると,約35mT(ミリテスラ)となった。SQUIDの検出感度には及ばないものの,約100フェムト秒という高い時間分解能が得られることが示された。研究グループは,高い時間分解能と空間分解能を兼ね備えた新たな磁気センシングの開拓につながる成果だとしている。

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