古河電気工業は,同社の従業員3名が,デジタルコヒーレント通信用狭線幅波長可変光源(波長可変レーザー)の研究開発と実用化の功績により,「2021年度電子情報通信学会業績賞」を受賞したと発表した(ニュースリリース)。
電子情報通信学会業績賞は,電子工学および情報通信に関する新しい発明,理論,実験,手法などの基礎的研究および実用化における成果のうち,学問分野への貢献が明確な貢献者に贈呈されるもの。
コヒーレント通信は,従来広く使われてきた光の強弱による信号伝達方法に対して,光の位相や偏波を使って信号を送る方法。信号劣化が少ないため長距離へ大容量の信号を送るのに適している。現在使われている光デジタルコヒーレント通信は,これにデジタル信号処理技術を組み合わせることで2010年頃から実用化されている。
コヒーレント方式では,信号光源およびLOの位相ノイズ,すなわちスペクトル線幅が重要な特性であり,線幅が広いと位相ノイズが増えて信号にノイズが乗ってしまう。より高速,より長距離への通信においては,より狭い線幅の半導体レーザーが信号光源として必要となるが,高速化に対応する変調器は光損失も大きくなるため,従来以上に高い光出力の信号光源が必要とされている。
同社の制御回路付き波長可変レーザーモジュールは,高出力で狭線幅動作が可能となるよう独自に設計された半導体レーザー素子設計,微小光学接合技術を駆使した高結合と低消費電力小型パッケージ設計,ならびに狭線幅特性を維持する電気制御回路の低雑音設計からなり,これらの技術による製品の量産化を実現した。
この技術の実用化により,現代の情報化社会を支え,特に5Gに代表される次世代大容量通信網構築に世界的に貢献した業績を,高く評価されたという。