大阪大学,米カリフォルニア大学バークレー校,米宇宙望遠鏡科学研究所,米NASA,ポーランド ワルシャワ大学は,単独で存在するブラックホールの候補天体を世界で初めて発見した(ニュースリリース)。
大きな星の死によってブラックホールができるのであれば,天の川銀河には1千万から何億個ものブラックホールが散らばっているはずだが,孤立したブラックホールは目に見えない。これまで発見されたブラックホールは,銀河の中心にある超巨大ブラックホール以外は全て伴星を伴う連星だった。
重力が強く,光を飲み込んでしまうため,直接見ることができないブラックホールは,周囲の環境にどのような影響を与えるかによって,その存在を推し量るしかない。星質量程度のブラックホールは,連星系の一部であれば,伴星である恒星の物質がブラックホールに降り注ぐときに発生するX線を検出することで発見されてきた(5~20太陽質量程度)。
また,近年,2つ以上の数十太陽質量のブラックホールが合体したときに発生する重力波を検出することができるようになった。しかし,単独で存在するブラックホールの存在量がわからない限り,宇宙全体のブラックホールの総量はわからないという課題があった。
今回研究グループは,その強い重力場による空間の歪みのために,遠くの星がゆがんで明るくなり,位置がずれて見える,重力マイクロレンズ現象を利用することにより,単独で存在するブラックホールの候補を発見した。
このようなコンパクトな高密度天体が天の川銀河にどれくらい存在するのかを明らかにすることは,星の進化,特に星の死に方,そして銀河系の進化を理解するのに役立つという。研究グループは,一部の宇宙理論研究者が提唱する,ビッグバンで大量に作られたと考えている原始ブラックホールの存在量を明らかにできるかもしれないとしている。