東北大学の研究グループは,これまで屋上PVとEVを蓄電池として用いて都市レベルでCO2フリーの電力供給を行なうシステムの研究を行なってきた(SolarEVシティー構想)。今回米パデュー大学,韓国ソウル大学と共に,ソウルを含む韓国の都市と地域の分析を行ない,電力消費とガソリン車などからのCO2排出を最大86%減らしながら,最大51%のエネルギー経費の節約に繋がることを明らかにした(ニュースリリース)。
カーボンニュートラルを実現するには,価格の下落が著しい太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)の活用が欠かせない。そこで研究グループは,屋根上PVとEVを用いた都市の脱炭素化に関する研究を進めてきた。
これまでの研究によると,屋上PVを都市の建物の屋根に最大70%に敷設し,全ての自動車をEVとし蓄電池として用いることで,都市の脱炭素化が低コストで大幅なCO2排出削減に繋がることを示した。
例えば,日本の9つの都市(東京都区部,札幌市,仙台市,郡山市,新潟市,川崎市,京都市,岡山市,広島市)において,PV+EVシステムによって都市の53-95%の電力需要を賄うことができることが分かった。自動車と電力消費からのCO2排出の54-95%の削減に繋がるという。
また,2030年のPVとEVの価格を想定すると,26%-41%のエネルギー経費の削減に繋がることがわかった。ちなみに仙台市は,屋根上PV+EVシステムによって,都市の電力需要の最大81%の供給を行なうことが可能で,81%のCO2排出削減となるとする。また,31%のエネルギー経費の削減にも繋がるとする。
今回研究グループは,韓国の都市,ソウル,インチョン,テジョン,セジョン,チェジュ島の分析を行なった。韓国の都市は,日本に比べてマンション等の共同住宅が多く,一人当たり屋根面積が比較的小さいため,日本に比べて若干PV+EVシステムの効率は小さくなるが,ソウル市でも最大49%のCO2削減に繋がることがわかった。
チェジュ島は,戸建て住宅が多く最大86%のCO2排出削減に繋がる。日本,韓国共に世界的な自動車・電機メーカーを有し,新しいPV+EVを基盤とした分散型電源システムを構築する能力を有する。今後,SolarEVシティー構想の実現に向けての協力が求められる。
また,東北大学の研究グループは,米,インドネシア,中国,仏,豪の研究者と共に,世界の都市において,PV+EVシステムの脱炭素化ポテンシャルが,気候や,都市の形状、電力システムの違いによってどの程度影響されるか研究を進めているとしている。