愛媛大学,シャープ,コスミックエムイーは,超小型広視野角監視カメラの開発に成功した(ニュースリリース)。
ロボット支援手術は2000年頃から実用化され,一部の施設で臨床試験レベルの使用は行なわれていたが,当初目的としていた遠隔手術の目途は立たず,器械が大きいためロボットアーム同士の干渉が生じるなどの問題で普及に至らなかった。
米Intuitive Surgicalの「da Vinci S, Si, X, Xi」が2010 年代に入り登場すると,泌尿器科領域を皮切りに各疾患領域に使用され始めた。消化器外科領域では,2018年4 月に保険適用が開始され,2022年4月には適用拡大がなされ,普及が促進されることが見込まれている。
ロボット支援手術の長所には,拡大視効果による繊細な3D映像の享受・多自由度鉗子による操作性向上・手振れ防止機能等がある。一方短所として,死角の存在に加え,“触覚が欠如”していることがある。
この短所は非常に危険な状況を生む可能性があり,実際に術中の臓器損傷を原因とする合併症が生じたという報告が散見されるため,執刀医となる外科医は制限される傾向にあり,外科学発展の律速になっている面もあるという。
研究グループは,この短所を解決するために,俯瞰するように監視できる超小型で広い視野角を有する腹壁固定型のカメラ「BirdView(バードビュー)」を開発した。実際にトロッカーから挿入できるサイズへの小型化,牽引力に対する耐久性,熱損傷,ハレーションのコントロール等,様々な検証をブタを用いた動物実験で繰り返し行なった。
2017年には,ヒトを対象とした第一相試験「腹腔鏡補助下大腸切除術施行時における,超小型広視野カメラシステムの安全性および有用性に関する臨床研究」を行ない,安全性の確認を行なった。
その後,上市に向けて手続きを進め,2022年3月31日に薬事認証を受けている。すでに使用も可能だが,研究グループは,愛媛大学での臨床試験を経て一般に販売する予定だとしている。