東北大学,日本製鋼所,三菱ケミカルは,低圧酸性アモノサーマル法において,高品質なシード(種結晶)を用いることにより結晶性がよく,高純度な窒化ガリウム結晶の成長を確認した(ニュースリリース)。
電力制御を担う高周波パワートランジスタなど,自立したGaN基板上に作製される電子デバイス(GaN-on-GaNデバイス)はエネルギー消費を抑えることでCO2の削減につながると期待されている。しかし現在市販されているGaN単結晶基板では品質に課題があり,GaN-on-GaNデバイスのポテンシャルを十分に引き出し切れていなかった。
研究では,開発した「低圧酸性アモノサーマル(Low-pressure acidic ammonothermal:LPAAT)法」を用いた。LPAAT法は大口径のGaN単結晶基板が安価で量産可能になると期待されている技術。
既に実用化もなされている,高圧の超臨界流体アンモニアを用いる酸性アモノサーマル(AAT)法と比較して半分の圧力で結晶成長が可能なため装置構成と運転上の理由から量産に向いているという。
研究ではLPAATの実用化に向けてさらに研究を進め,実験炉において成長に使用するシードの種類(HVPE製,SCAAT製)の違いにより成長後の外観や結晶性などの品質に大きな差が出ることを明らかにした。
三菱ケミカルがSCAATとして商標登録した高品質GaNシードを用いてLPAAT成長させた結晶は,外観が透明かつ平坦であり,結晶モザイク性についても低いこと(対称面・非対称面のX線ロッキングカーブ半値全幅が20秒以内)を確認した。
またフォトルミネッセンススペクトルも,12Kでは高純度な半導体で観測される束縛励起子の再結合によるバンド端発光強度が深い準位の発光と比較して約3桁高く,室温においても自由励起子の再結合によるバンド端発光が支配的であり,高純度なGaN結晶であることを確認した。
このようにLPAAT法による大口径・低反り・高純度なGaN単結晶基板の普及により,信頼性に優れるGaN縦型パワートランジスタに代表されるGaN-on-GaNデバイスの研究が促進され,早期の実用化が期待されるとする。
研究グループは,この成果を量産用大型オートクレーブ運用に活用し,LPAAT法にて高品質かつ大口径なGaN基板の量産技術の実用化を目指すとしている。