KDDIら,テラヘルツ帯マルチビームアンテナを開発

KDDI総合研究所と名古屋工業大学は,テラヘルツ帯で電波の放射方向を変更できる,高利得なマルチビームレンズアンテナと,小型な平面型マルチビームアンテナの開発に初めて成功した(ニュースリリース)。

テラヘルツ帯は,電波の直進性が高く,遠くまで届きにくい(伝搬損失が大きい)性質からも,利得の高いアンテナが必要となる。しかし,利得の高いアンテナはビームが鋭いため,ユーザー端末の場所が動く移動通信におけるテラヘルツ帯の実用化に向けて,ビーム方向を変更可能なアンテナが求められていた。

また,Beyond 5G/6G時代においてはユーザー端末の進化も必要となる。しかし,スマートフォンなどのユーザー端末には筐体サイズからくる搭載可能なアンテナ数や最大の送信電力といった制約がある。これらの制約をなくすために研究グループは,ユーザー端末が周辺のさまざまなデバイスとテラヘルツ帯で協調し,各デバイスに搭載されたアンテナを仮想的に束ねて一つの端末として動作する「仮想化端末」を提案している。

今回研究グループは,テラヘルツ帯(300GHz帯)でビーム方向を変更可能なマルチビームアンテナを世界で初めて開発した。高利得なマルチビームレンズアンテナと,小型な平面型マルチビームアンテナの2種類で,両アンテナとも60度の角度(アンテナ正面を0度とし,プラスマイナス30度)でビーム方向を変更できる。

開発したマルチビームレンズアンテナは,レンズと1次放射器(ホーンアンテナ)で構成され,接続するホーンアンテナを切り替えることによりビーム方向を変更する。レンズにテラヘルツ帯で誘電損失の小さい素材の選定およびレンズ形状とホーンアンテナの配置の最適化により,ピーク利得が27dBi(全方向に同じ電波強度で放射する等方性アンテナと比較して約500倍),60度の範囲で利得が22dBi(等方性アンテナと比較して約160倍)以上となる高利得を達成したという。

小型平面マルチビームアンテナは,マイクロストリップコムラインアンテナとビーム形成回路で構成され,ビーム形成回路の接続ポートを切り替えることで,ビーム方向を変更する。アンテナとビーム形成回路を層状に重ねた独自構造により,サイズ25mm×17mm×2mmと小型化を図った。

これにより,テラヘルツ帯を使った移動通信の実用可能性が高まる。また,これらのアンテナをスマートフォンや周辺デバイスに搭載することで、「仮想化端末」が可能となり,Beyond 5G/6Gで求められる超高速・大容量通信の実現が期待されるという。

研究グループは今後,さらに広い角度にビーム方向を変更可能なアンテナの開発を進める。また,開発したアンテナを用いて,仮想化端末の実現に向けた,テラヘルツ帯の実証実験を進めていくとしている。

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