NECは,中日本高速道路(NEXCO中日本)に対して,光ファイバセンシング技術やAI技術を活用し,車両の走行時における振動から位置・速度・進行方向といった交通流を可視化する高精度監視システムを本年3月に納入したと発表した(ニュースリリース)。
高速道路事業者は,道路管制のため高速道路上で発生する異常事象の発見や交通流の時系列的な傾向を捕捉する必要があり,ループコイルなどの交通量計にて部分検知(狭域検知)による計測を行なっている。
従来の計測方法で広域にわたり連続的な交通流を高い精度で検知するためには,交通量計の複数かつ高密度の設置が必要となり,導入・維持の両方の観点でコスト等の課題があった。
同社はこれまで,光ファイバセンシング技術を活用して電柱のひび割れの検知や道路の交通モニタリングの共同実証を実施しており,その知見を活かして光ファイバケーブル自体をセンサ化する光ファイバセンシング装置を提供している。
今回,新たに車両の走行振動から交通流を連続的に把握する分析AIエンジンを開発し,この装置に組み合わせることで高密度・高精度に交通流を可視化するシステムを構築した。
このシステムは,光ファイバセンシング装置で走行車両に起因する振動情報からデータを生成する。このデータを分析AIエンジンにより,時間方向かつ距離方向に連続的な走行の軌跡に変換し,1km毎,1分毎の平均速度と所要時間を推定する。
これにより,広域にわたり過去から現在に至る交通状況の変化をデジタル上に再現することが可能となり,監視漏れのない連続的監視や事故・渋滞の早期検知等の道路管制の高度化を支援するという。
なお,新たに開発した分析AIエンジンは,環境ノイズが重畳したデータでも走行車両の振動の軌跡を抽出することが可能。走行軌跡や環境ノイズを模擬した合成データのみで構築した学習モデルを使用して,明瞭な振動情報から順に入力し出力をマスキング処理する反復プロセスを採用した。
これにより,環境ノイズにより不明瞭な走行車両の振動情報でも走行の軌跡の抽出が可能となり,監視漏れを防止して,広域で高密度・高精度の交通流把握を実現するとしている。