京大ら,次世代自動車用鋼板の組織変化を直接観察

京都大学,九州大学,高輝度光科学研究センターは,大型放射光施設SPring-8において,非破壊でTRIP鋼の相変態挙動を直接可視化できるX線ナノトモグラフィー技術と結晶方位や転位密度を測定可能なペンシルビーム回折トモグラフィーを組み合わせたマルチモーダル解析技術を開発した(ニュースリリース)。

TRIP鋼は,外⼒が加わると⾦属組織の構造が変化する相変態というユニークな特徴により,優れた強度・延性バランスを有しながら,衝撃吸収能にも優れるため,次世代自動車用鋼板として期待されている。

しかし,この相変態は,研磨や切削でも容易に起こってしまうことから,TRIP鋼の相変態の挙動を観察・解析するには非破壊で行なうことが必須となる。これまでに,X線回折を用いたその場試験によりTRIP現象の研究が行なわれているが,破壊の起点となるミクロ組織の特徴を把握する,結晶粒ごとの局所的な挙動を検出することは困難だった。

研究では,放射光を用いたX線CT(X線ナノトモグラフィー)と3ミクロン程度まで集光したX線ビームを,試料を回転させながらラスタースキャンするペンシルビーム回折トモグラフィーによるマルチモーダル解析技術を開発およびTRIP鋼に応用した。

研究グループは,大型放射光施設SPring-8のBL20XUにおいて,X線ナノトモグラフィーとペンシルビーム回折トモグラフィーを実施した。新たに開発された20-30keVの高エネルギーのX線ナノトモグラフィーは,0.16μmと非常に高い空間分解能を有している。

X線ナノトモグラフィーを用いて,外部負荷を加えたときの残留オーステナイトの相変態挙動を観察した結果,3Dでの解析では,粗大な残留オーステナイト(初期サイズが2.5μm以上)は高い安定性を有しており,微細な残留オーステナイト(初期サイズが2.5μm未満)と比較して2倍以上の外部負荷を加えないと完全に変態しないことが明らかになった。

これは,大きな残留オーステナイトから複数のマルテンサイトへと相変態することに起因していると考えられるという。また,相変態の初期とそれ以降では,その機構が異なることも証明した。

この結果は,同一サンプルで本技術を適用できていないものの,残留オーステナイト間の相互作用が直接可視化され,ミクロ組織設計の明瞭な指針が得られたもの。研究グループでは,この技術を同一サンプルに適用可能な解析技術へと発展させつつあり,高度な学術知⾒に基づき既存材料の⼒学特性を極大化できる構造材使用法に繋がるものとしている。

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