東レは,独自の膜設計および膜形成技術の追求により,従来対比大幅な低コスト化を実現する「超ハイバリアフィルム」を創出したとを発表した(ニュースリリース)。
昨今,スマート社会の構築に向けたIoT技術の急速な発展により,ウェアラブル生体センサーやフレキシブルディスプレーなどのフレキシブルデバイスの需要がますます大きくなることが予測されている。また,カーボンニュートラル実現に向けた世界的な潮流から,再生可能エネルギーやエネルギーハーベストが注目され,有機薄膜太陽電池やペロブスカイト太陽電池の需要の拡大も予想されている。
これら用途に使用される有機デバイスや化合物は水分に弱く,封止・保護する必要がある。従来封止には,欠陥のない高密度な薄膜形成が可能なスパッタ法やCVD法により作製した超ハイバリアフィルムが使用されていたが,いずれも成膜速度が遅く高コストであるため,用途拡大が課題となっていた。
今回同社は,スパッタフィルムの開発で培った高密度な複合化合物膜の設計技術を,食品包装用バリアフィルムなどに用いられる高速蒸着技術に適用することを可能とし,スパッタ法やCVD法と同等レベルの水蒸気透過率10-3[g/m2・day]という高いバリア性能を達成。この超ハイバリア・蒸着フィルムは,成膜速度が一般的なスパッタ法対比100倍以上となり,コストも1/5以下に抑えられるとしている。
また,この開発品は,透明性や柔軟性にも優れるため,各種フレキシブルデバイスや太陽電池に展開可能であり,IoT市場の拡大やカーボンニュートラルな社会の実現にも貢献することが期待できるとし,同社は2023年の実用化を目指していくという。