富士経済は,C-Si(結晶シリコン)を中心とした既存の太陽電池とは異なる特性を持ち,BIPV(建材一体型太陽電池)やIoT用センサー電源など優位性を生かした用途開拓が進められている新型・次世代太陽電池の世界市場を調査し,その結果を「2022年版 新型・次世代太陽電池の開発動向と市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
この調査では,DSC(色素増感太陽電池),OPV(有機薄膜太陽電池),PSC(ペロブスカイト太陽電池)市場の現状を捉え,将来を予測するとともに,参入企業20社の商用化や商用化から量産化・事業化に向けた見通しを展望した。
それによると,DSCは現在,主に無線通信・センサー用電源として市場形成の初期段階にあるとして,2022年の市場は60億円を見込む。既存のA-Si(アモルファスシリコン)太陽電池や一次電池に対してコスト面で優位性を確立できていないほか,1製品あたりの搭載容量がmW単位と小さいことから,量産化には至っていないとする。
一方,デザイン性や軽量,ポータブルといった特長を活かし,DSCを搭載するコンシューマー向け製品の開発を進める企業もみられるという。今後は,発電デバイス単体ではなく,通信デバイスやセンサー,蓄電池などと一体化したモジュールとしての提案を中心に採用が広がり,2035年の市場は350億円を予測する。
OPVは,DSCよりも量産化や事業化を進めている企業が多く,年間100万m2規模の生産能力を有する企業も複数ある。印刷技術を応用したフィルム基板の製品が中心であり,主にBIPVや建材,窓材用として採用が拡大しているという。
また,透明性やデザイン性を重視した室内用窓フィルムや衣料品,タペストリーなどでも応用製品がみられるとし,2022年の市場は前年比12.5%増の180億円を見込む。今後も,BIPVや壁材,窓材用を中心に市場拡大するとみている。
PSCはC-Siをはじめとした既存の太陽電池の代替需要獲得が期待されているとする。欧州や中国ベンチャー企業を中心に,2020年から2021年にかけて商用化が開始され,2022年の市場は前年比2.7倍の400億円を見込む。
2022年以降,本格的な量産が開始されるとみる。特に,既存太陽電池からの屋外用途の代替需要は潜在的な市場ポテンシャルが高いという。今後,BIPVを含む建材用途やC-Si太陽電池の上にPSCを乗せ,太陽光の波長の吸収できる幅を広げることで発電効率を向上させたタンデム型の量産化により,2035年の市場は2021年比48.0倍の7,200億円を予測している。