日本電信電話(NTT)と三菱重工業は,光イジングマシンLASOLVを活用し,熟練者に頼っていたプロジェクト人員計画を自動化する共同実証を実施し,人員計画の作成に要する工数を大幅に削減できる可能性を確認した(ニュースリリース)。
熟練者によるリソース計画が必要な大型プロジェクトの一つとしてプラント点検工事がある。国内外に納入した発電プラント等の構成機器の健全性を確認し,必要な部品交換や補修を定期的に行なう工事であり,さまざまな検査や補修スキルをもった作業員を複数の現地に派遣する必要がある。
そのため,人員計画では現地間の移動や要求されるスキルと人数,さらに連続勤務日数や残業時間などの制約条件を満足させることが求められる。従来は,熟練の計画者が経験に基づいて人員計画を作成しており,計画に多大な時間を要することやベテランのスキルに頼っていることが課題となっていた。
両社は,2014年に「社会インフラ×ICT」に関する研究開発連携に関する基本契約を締結し,NTTの研究所が持つICT(情報通信技術分野)の研究開発成果を三菱重工のエネルギー・環境、交通・輸送等の社会インフラ関連製品や国内外の工場・建設現場等に適用し,新たな価値創造をめざす取り組みの一つとして,光イジングマシンLASOLVの実用化に向けた共同プロジェクトを2018年3月より開始した。
三菱重工で実業務の工事日程,要求スキル・人数,派遣候補となる作業員の情報,現地サイト間の移動時間等に関するデータを準備し,これらのデータに対し,NTTにて制約条件を満足する人員計画を探索する5万ビット規模のイジングモデルを構築した。
今回の実証では,点検対象プラント数26カ所,工事数29件,作業員141人,日数64日間の期間で,保有スキルや連続勤務日数,勤務時間上限,プラント間移動日数,休暇予定といった主要な制約条件を満たす人員計画の解候補を,光イジングマシンLASOLVにより導出した。
その結果,従来は人手で1カ月程度かけて作成していた人員計画を非常に短い時間で得られることを確認し,LASOLVの活用により人員計画作成に要する工数を大幅に削減できる可能性を示したという。この成果は人員以外のリソース計画立案にも適用可能としている。
両社は今後実用化をめざし,システム化など実業務への適用検証を進めるとともに,カーボンニュートラルやエナジートランジションに向けた重要な事業課題の解決に関する取り組みを進めていくとしている。