東北大ら,脳型コンピューターに向け新素子を開発

東北大学とスウェーデン ヨーテボリ大学は,スピントロニクス技術に基づくニューロンとシナプスが統合された人工構造を作製し,脳における「同期の制御」の機能を初めて実現した(ニュースリリース)。

脳の神経回路網は多数のニューロンからなる複雑なネットワークで成り立っており,その接続部分にシナプスが位置する。

よって脳神経回路をより忠実に模倣した脳型コンピュータを実現する上では,人工的に形成した多数のニューロン間の接続を,同じく人工的に形成したシナプスで自在に制御できることが望まれる。

ここ数年,人工ニューロン素子,人工シナプス素子の実現を目指す研究が多数行われる中,次なるステップとしてそれらを組み合わせてネットワーク構造として機能を創出する方法を開拓する研究が求められていた。

研究グループは,単一のスピントロニクス振動子(人工ニューロン)とメモリスタ(人工シナプス)からなる構造を作製し,その動作を詳しく調べた。ニューロンとして機能する振動子に相当する,非磁性のW(タングステン)と強磁性CoFeB(コバルト鉄ホウ素)からなる積層構造の狭窄部分に,膜面内方向に特定の条件を満たす電流が導入されると,CoFeBの磁化に定常的な歳差運動(発振)が誘起される。発振が起こる条件はCoFeB層の磁気特性で決まり,またその周波数は導入する電流に応じて変化する。

一方,シナプスとして機能するメモリスタに相当する,MgO(酸化マグネシウム),AlOx(酸化アルミニウム),SiNx(窒化シリコン)からなる積層構造では,上部のTi(チタン)と Cu(銅)からなる電極に印加する電圧の履歴に応じて電気抵抗が変化し,高抵抗状態ではメモリスタ内には電界が発生し,低抵抗状態ではメモリスタ内に電流が流れる。

メモリスタが高抵抗状態と低抵抗状態のいずれの場合でも振動子(人工ニューロン)の発振特性や振動子を連結した際の同期のしやすさ(結合状態)を変調でき,またその変調の程度はメモリスタ(人工シナプス)の状態に依存することを確認した。これが,今回実証された各振動子間での同期発振の起こりやすさの局所的制御と保持を可能とするメカニズムだという。

この成果は,ニューロンとシナプスをそれぞれスピントロニクス振動子とメモリスタで模擬し,人工ニューロン間の結合を人工シナプスで可塑的に制御できることを示したものであり,脳神経回路の基本的な機能を比較的忠実に再現するものだとする。

研究グループは今後,動作電力の低減や大規模化に向けた技術開発が進展することで,この技術が脳型コンピュータの実現へと繋がっていくとしている。

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