京都産業大学は,半導体Cu2Oの中の2つの同位体63Cuと65Cuの核スピン格子緩和時間の詳細な測定を銅核四重極共鳴法によって行なったところ,格子振動による緩和過程に加えて,超微細場からの磁気ゆらぎを分離測定することに成功したと発表した(ニュースリリース)。
非磁性の真性半導体であるCu2Oは格子ゆらぎが支配的であると長年思われてきた。
研究グループは,自然界に存在する2つの同位体63Cuと65Cuの核スピン格子緩和曲線の詳細な測定を,現代的な核四重極共鳴スピンエコー法によって行なったところ,電気四重極ゆらぎによる緩和過程に加えて,超微細場からの磁気ゆらぎが存在することを発見した。
真性半導体には電気伝導キャリアは存在しないはずなことから,未知の電子スピンゆらぎといえるという。イオン欠陥に起因する希薄なキャリアによる核スピン散乱機構が原因と解釈可能だが,その測定例は実際にはあまり多くない。
バンド間の電子正孔束縛状態のエキシトンによる散乱機構も考えられ,研究グループは,その理論的な解明は今後の展開に期待されるとしている。