日本電気(NEC)と南紀白浜エアポートは,南紀白浜空港における滑走路の点検業務の効率化や精度向上に向け,「長距離3D-LiDAR」を活用して滑走路上の異物検知を行なう実証実験を本年4月から実施すると発表した(ニュースリリース)。
「長距離3D-LiDAR」は,3D-LiDARに長距離・大容量光送受信技術と3D点群データ解析技術を組み合わせたセンサシステム。通常の3D-LiDARでは200m前後の検知が,最長1kmの長距離で可能となる。さらに,レーザー光は暗闇でも測定可能なため,夜間時間帯の異物検知が可能となる。
空港では滑走路点検の一つとして,定時点検(主に路面の欠片などの異物検知が目的)が行なわれているが,限られた人員が人手や目視で行なっており,多数の点検業務や保守業務をデジタル技術を活用し,業務の高度化および効率化することが求められていた。
両社は,滑走路を走る点検車両のドライブレコーダーを活用した「くるみえ for Cities」による滑走路面の点検業務効率化や,衛星合成開口レーダを活用して空からの滑走路面の変動や空港周辺の建築物や木々などの障害物の検知に向けた取り組みを進めてきた。
今回,夜間時間帯での点検業務デジタル化に向けて,これまでの「蟻の目」(ドライブレコーダーによる狭域監視)と「鳥の目」(衛星合成開口レーダによる広域監視)による取り組みに加え,新たに「コウモリの目」(長距離3D-LiDARによる暗闇での監視)を用いた実証実験を開始する。
現在,滑走路の定時点検業務は1日2回滑走路全面を車両で往復し,職員が目視で異物が無いことを確認しているが,「長距離3D-LiDAR」を活用することにより,レーザー照射機器から1km圏内にある異物の位置や距離だけでなく,形状までが数センチ単位で立体的に管理端末の画面上に表示され確認することが可能になる。
さらに,レーザー光により飛行機の運航が比較的少ない夜間時間帯での異物検知点検が可能となり,日中の時間帯を他の業務に割り当てることができる。今回,これらによる省力化や作業時間の短縮化などの業務効率化,および検知精度の向上を評価・検証する。
なお,1km先まで認識が可能なためレーザー照射機器1台当たりの対応範囲が広く,レーダ活用の検知システムに比べ機器の設置台数が減り,設置や運用などのトータルコストの削減も期待できるという。
両社は今後,飛行場周辺の一定の空間を無障害の状態にする制限表面監視にも「長距離3D-LiDAR」を活用し,省力化や測定精度の向上など,さらなる予防保全に取り組むとしている。