第14回レーザー学会産業賞が決定

レーザー学会主催による第14回レーザー学会産業賞が決定した。

この賞はレーザーに関する製品・技術の開発,実用化,普及などにおいて,国内のレーザー関連産業の発展に貢献しうる優秀なものに対し,本会賛助会員に産業賞を授与するもので,レーザー関連の産業技術として技術および市場実績を重視した『優秀賞』,市場の開拓および将来性を重視した『奨励賞』,および優れた基礎的技術または長年の累積的貢献を重視した『貢献賞』を授与する。

今回は優秀賞が2件,奨励賞が2件,貢献賞が2件の計6件が選ばれた。本賞の授賞式は4月21日,光技術総合展示会「OPIE’22」構成展示会OPIE’22ザーEXPO 2022」の会場(パシフィコ横浜)にて開催される予定。ここでは以下に受賞社と受賞理由を紹介する。

【優秀賞】
『光コム距離計/光コム形状測定器(L90,S40,M5)』―(株)XTIA
光コムを用いた測距技術を開発し,長距離・高精度・高速を両立した計測器を産業向けに,2016年に3次元形状測定器インライン検査装置をリリースしており,各自動車メーカーにおいては部品の全数検査を実現している。本装置の特徴はファブリペロー電気光学変調器(FP-EOM)と呼ばれる外部変調器を使う方法を採用し小型モジュール構造のデバイスとして装置に組み込み,周波数間隔の異なる光コムを複数発生させることで,位相雑音を相殺し90mまでの距離計測であれば7μmまでの測定誤差を達成していることにある。

富士経済調査レポートによれば、外観検査市場における販売数量及び金額で高いシェアを持つという。今後,中大型部品の検査において8割を占める人による官能検査の置き換えや,さらには加工プロセスの合間に本技術を挿入することで加工精度向上が期待でき,無駄の少ない生産工程など,環境などへの負荷低減に波及していくと考えられる。このことが高い評価を得た。

『テラヘルツ分光・イメージング・システム TAS7500シリーズ』―(株)アドバンテスト
本技術の特徴は,発生と検出に必須となる自社開発したフェムト秒ファイバーレーザー(パルス幅50fs/ジッタ30fs以下)を2台用いて繰り返しタイミングを,光・電子計測器により高精度に位相変調させ,サブピコ秒のテラヘルツパルスの時間領域を,2fsの分解能で高速にサンプリングするテラヘルツ光サンプリング方式を開発したことにある。

さらに,非線形結晶を用いた独自のテラヘルツ発生器を新規に開発しており,2012年にテラヘルツ分光・イメージング・システム『TAS7500』の販売を開始して以来,日本やアジア及び欧米での販売実績は着実に積んでおり,産業用途向けテラヘルツ応用製品として高い実績を持つ。今後も次世代無線通信(Beyond5G)市場で大きく拡大し,また非破壊・非侵襲の特性を活かした非破壊検査市場,医療診断装置などの市場創出が期待されている。また、テラヘルツ研究をリードする理化学研究所を始め産学連携を通して技術の蓄積を進めていることもあり,この点が高く評価された。

【奨励賞】
『REGIUS AJ SERIES』―(株)アマダ
自社開発したファイバーレーザー発振器には独自のビーム制御で素材・形状に応じて自動最適加工を実現する技術を搭載しており,加工機は世界最速(340m/分)駆動のリニアモータドライブによる3軸リニア制御と合わせた。

本装置により,従来機比2倍の加工速度を実現し,またカメラによるAI判定機能が高精度に自己診断を行なうことによるダウンタイムゼロなども実現しており,高い生産性による産業分野への貢献が大きく期待できるという。販売実績は2020年12月以降、国内への出荷台数が堅調に増えており,海外市場への展開も視野に入れている製品としている。今後,DX(デジタル・トランフォーメーション)と親和性の高いこれら自動化技術による生産性向上が期待できることから奨励賞に選定された。

『RICOH FC-LDA Printer』―(株)リコー
本製品は,ペットボトル商品のラベル裏にQRコードを直接マーキングすることもできる高出力レーザーマーカーとなり,2021年6月から発売が開始された。本技術の特徴は,従来のガルバノスキャナ方式ではなく,独立制御された192チャンネルの10Wの半導体レーザー(LD)をアレイ状に並べてレーザーマーキングをするというもの。

これにより,画像やバーコード,QRコードといった複雑形状の高速印字が可能となり,高速生産ラインへの導入を実現した。販売開始時から大量生産するラインへの導入が進んでおり、食品や製品のトレーサビリティへの展開が期待されている。今後は,高出力LDを多チャンネルに独立・高速精密制御できることからレーザー溶接への応用やLIFT(Laser-Induced Forward Transfer)への応用が期待できるとし、これらの点が評価された。

【貢献賞】
『高品質単結晶及びレーザー光源による国内の科学技術およびレーザー産業への貢献』―(株)オキサイド
2000年の創業以来,固体レーザー関連製品のコアになる結晶技術を有する希少な企業として,多種多用かつ高品位なレーザー用単結晶の開発と製品化を実施しており,最近はレーザー機器関連にも業態を拡げ,レーザーの産業用途の拡大に大きく貢献している。また,世界の先端的半導体の量産・市場拡大等に大きく貢献しており,今後のレーザー業界のみならず光関連産業への貢献が期待されており、このことが高く評価された。

『車載用2次電池へのレーザー溶接技術の適用』―プライムアースEVエナジー(株)
1996年の創業以来,車載用の二次電池を主力製品としており,レーザーを用いた高速且つ高品位な封かん溶接を開発,適用してきた。本技術は,半導体レーザー(高吸収率)とファイバーレーザー(高集光性)を同軸状に合成して溶接する方式であり,半導体レーザーで形成した溶融池の中心にファイバーレーザーを重畳し湯流れを形成,キーホールの形成無しにすることで,スパッタレス且つ高い生産性を実現している。2次電池の製造は現在の世界情勢の流れに沿って飛躍的な拡大が見込まれており、さらには車載用に限らない二次電池製造への応用が期待でき,産業への貢献は大きいと評価された。

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