2035年自動運転システム市場,2兆5,381億円に

富士キメラ総研は,自動車メーカー各社が目指している高度な自動運転化やゼロエミッション車の実現に欠かせない要素として注目される,車載電装システムの世界市場について調査し,その結果を「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査2022上巻」にまとめた(ニュースリリース)。

調査のうち,注目市場とするADAS,自動運転システム,電子インナーミラー/電子サイドミラーの概要は以下の通り。

ADAS
ADASはAEB(オートノマス・エマージェンシー・ブレーキ)やACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール),LKA(レーン・キープ・アシスト)などの走行支援機能を制御するシステム。システム構成は,センシングカメラのみで制御するエッジコンピューティング型のシステムや,センシングデバイスをADAS-ECUで集中制御する中央集権型のシステムなど組み合わせがある。

市場はECUおよびセンサーの組み合わせを一つのシステムとして捉えた。なお,SAE自動運転レベルの定義ではレベル1~2のシステムを対象とし,HDマップとLiDARが両方搭載されていないシステムも含む。

それによると,2019年の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)会合で,乗用車などのAEB国際基準が成立したことを背景に,市場は拡大しているという。ARXの搭載義務化が欧州や日本をはじめ各国で広がっており,2021年は前年比9.0%増の1兆5,033億円を見込む。

地域別にみると,AEB搭載の国際基準に署名した日本や欧州などでは新車への搭載が義務化されているため,自動車生産台数に伴い順調な市場拡大を予想する。北米や中国はAEB搭載基準に署名はしていないが,安全走行支援機能の需要は高まっているため,ADASの搭載率は堅調に上昇していくとみる。

自動運転システム
カメラおよびミリ波レーダー,LiDAR,高精度位置センサー,HDマップで構成されたシステムを対象とした。SAE自動運転レベルの定義ではレベル3~5のシステムとなる。現状,ロボットタクシーなどMaaS向けの自動運転車が先行して展開されている。

市場はまだ黎明期だが,2021年は自動運転車の投入が進んだことから,前年比2.2倍の57億円を見込む。一般車両では,2025年までにレベル4の自動運転車が市場へ投入されるとみる。レベル3システムでは事故が起きた際のドライバー側とシステム側の責任の所在が曖昧だが,一般車両向けではシステム側の責任が想定されるレベル4の搭載を目指す自動車メーカーが多いという。

地域別では欧州での展開が先行しているが,今後は中国が市場をけん引するとみる。中国では2021年にロボットタクシーのサービスが開始されており,2025年頃から一般車両向けの展開が進むと予想する。また,いち早く自動運転車が投入された欧州では,欧州自動車メーカー各社が2022年に自動運転車を発売する予定で,堅調な伸びを期待する。また,北米や日本でも自動車メーカー各社が開発に注力していることから,2025年までには市場が立ち上がるとみている。

電子インナーミラー、電子サイドミラー
光学インナーミラー,あるいは光学サイドミラーを,カメラとディスプレーを用いてデジタル化した製品を対象とした。電子インナーミラーは,オプション搭載が中心だが,高級車だけでなく大衆車でも対応車種が増えている。前後方録画機能が付いた製品の投入,また,電子インナーミラーを標準搭載した車種が登場しており,今後も大幅な市場拡大を予想する。

電子サイドミラーは,搭載が一部の車種にとどまっており需要は限定的だという。現状は光学サイドミラーの搭載が義務化されている地域があることや,故障時の安全性確保,消費電力やコスト高などの課題があるため,当面は欧州や日本自動車メーカーの一部車種での搭載に限られるとみる。

車載電装システムの世界市場
2021年は下半期に自動車生産台数が停滞した影響を受けたが,2022年は堅調な自動車生産に伴い,市場は前年比21.2%増を予測する。今後,車載電装化の流れは益々強まるため,2035年には54兆円を超える市場を予測する。

特に伸びが期待されるのは,HV/PHV/EV/FCV系だという。xEVの普及に伴い,各システムの需要増加を予想する。情報系も順調な伸びを予想する。中でも,コネクテッドサービスを強化する車外通信システムやIVIシステム,電子ミラー,乗員モニタリングシステムなどが大きく伸長するとみる。

また,走行安全系はADAS/自動運転システムの搭載増加,ボディ系はヘッドランプシステムの需要増加などにより,それぞれ順調な伸びを期待する。一方,パワートレイン系は,電動自動車の普及により,長期的には縮小を予想している。

デバイス&コンポーネンツの世界市場
HV/PHV/EV/FCV関連デバイス,センサーモジュール/アクチュエーターモジュール,入出力系デバイスに分類した。HV/PHV/EV/FCV関連デバイスは,電動化の進展により,急速に伸びているという。今後,順次強化されていく環境規制に向けて,各自動車メーカーは電動自動車のラインアップ拡充に注力しており,堅調な伸びが続くとみる。

センサーモジュール/アクチュエーターモジュールは,ADASや自動運転システムの搭載ニーズの増加を追い風に堅調に拡大しているという。中でも,LiDARは自動運転車で採用が増えるため,大幅な伸びを見込む。入出力系デバイスは,2021年は微増にとどまるものの,2022年以降は自動車生産台数の増加に伴い,堅調に伸びるとみる。

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