東北大学発ベンチャーのC&Aと東北大学は,貴金属ルツボを使用しない新規結晶育成手法Oxide Crystal growth from Cold Crucible(OCCC)methodを開発し,次世代のパワー半導体として期待されている酸化ガリウム結晶(最大約5cm径)の作製に成功した(ニュースリリース)。
酸化ガリウムはSiと同様に原料を溶かし,液体から結晶成⻑させる融液成⻑が可能であるため,成⻑速度が速く,⼀度に⼤容量の結晶を製造できる。この成⻑速度は,すでに実⽤化されているSiCと⽐べ10〜100倍程度速いため,⾮常に低コストな基板が期待されている。
しかし,現状の結晶作製⽅法は,融液を保持するルツボに⾮常に⾼価な貴⾦属であるイリジウムを⽤いているため,コスト低減が難しい。また,ルツボからイリジウムが酸化ガリウム融液中に溶けだし,育成した結晶への⾦属汚染の原因ともなる。さらに,イリジウム坩堝の酸化を防ぐために低酸素分圧下での成⻑を余儀なくされ,製法由来の酸素⽋陥が⽣じる等の問題もあった。
そこで研究グループではルツボを使⽤しない新規の結晶育成装置ならびに結晶育成技術OCCC methodを開発した。この⽅法では,酸化ガリウムの原料を隙間の空いたバスケットの中に充填し,電子レンジのように⾼周波コイルで磁場を発⽣させ,酸化ガリウム原料を直接加熱して融解する。
この時,原料融液と⽔冷したバスケットの間に焼結に適した温度域が⽣じ,ここで原料が固化し,融液を保持するルツボの代わりとなる。このように,原料の中⼼部のみを⾼周波加熱により溶かしつつ,周辺部を適切に冷却することで,安定した育成状態を実現することが出来た。
この状態で融液に種結晶を接触させ結晶成⻑させることで,⼤⼝径の酸化ガリウムインゴットを作製する。この⽅法⾃体は,導電性のよい⾦属材料等ではスカルメルト法として広く利⽤されているが,酸化ガリウムのような導電性の低い酸化物材料を加熱するために⾮常に⾼い周波数の磁場を安定して発⽣させる独⾃の⾼周波加熱装置を開発し,そこに引き上げ法を組み合わせることで,酸化ガリウムのバルク単結晶育成を可能とした。
結晶のサイズは最⼤約5cmのものが得られ,これはルツボを使⽤しない結晶育成⽅法では世界初の成果だという。さらに,ルツボからの⾦属汚染もないことから,⾮常に⾼品質な結晶となり,⾼性能なデバイスの実現が期待される。C&Aは今後,2インチ径の酸化ガリウム基板の⽣産と販売を計画しているという