JAEAら,K中間子原子からのX線を高精度測定

日本原子力研究開発機構(JAEA),中部大学らは,大強度陽子加速器施設J-PARCで供給される世界最高強度のK-中間子ビームと超高精度“温度計”を用いて,K-中間子に働く「強い相互作用」の測定精度を飛躍的に高めることに成功した(ニュースリリース)。

現代の物理学では,自然界には「重力相互作用」「電磁相互作用」「弱い相互作用」「強い相互作用」の4つの力があることが知られている。このうち「強い相互作用」はクォーク間に働き,クォークから陽子や中性子,中間子などを形成し,さらには陽子と中性子を繋ぎ止めて原子核を作る,いわば我々の身の回りの物質の起源を司っている。

研究グループが着目した「K-中間子」は原子核中に入ると「強い相互作用」によって複数の陽子を強く引きつけ,通常の原子核密度を超える高密度を形成する可能性が指摘されている。そのため,地球上には存在しない高密度核物質を生成する鍵として近年注目を集めている。

K-中間子に働く「強い相互作用」を詳細に調べる有力な方法の一つとして加速器施設から供給されるK-中間子を取り込んだ風変わりな原子「K中間子原子」を生成しX線のエネルギーを測定する方法がある。

しかしこれまでの実験では,K-中間子ビームの強度が限られるのでX線信号を多く得られない,加速器を使用した実験では高放射線環境下になるのでX線検出器の性能が低下する、といった困難があり,測定精度は充分とは言えなかった。

研究では,優れたエネルギー分解能と検出効率を併せ持つX線検出器である「超伝導転移端型マイクロカロリメータ」を導入した。この検出器は極低温技術による高感度な温度計を利用したものでX線のエネルギーを熱に変換して高精度に測定する。この検出器は外乱を受けやすいため,多数の粒子が飛び交う加速器ビームラインでの利用は難しいと考えられていた。

しかし,研究グループはそのような放射線環境下であっても実験装置全体やデータ解析手法の最適化により性能を十分に発揮させる手法を確立した。その結果,K中間子原子から放出されるX線のエネルギーをこれまでの10倍の精度で測定する事に成功した。

この成果は,K-中間子に働く「強い相互作用」に関する重要な基礎データとなる。今後,同様の手法で高精度なデータを積み重ねていくことで,現在全く未知である高密度領域まで含めた「強い相互作用」の解明,そして物質の起源の解明へと繋がっていくと期待されるという。

また,この成果で確立した手法は,ミュオン原子X線測定などの加速器ビーム実験,X線天文衛星による宇宙観測などのさまざまな放射線環境下におけるX線測定にも進歩をもたらすとしている。

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