理研ら,微小結晶試料の構造をXFELで高精度に解明

理化学研究所(理研),高輝度光科学研究センター,東京大学は,X線自由電子レーザー(XFEL)を,構造解析が難しい微小結晶試料に応用する技術を開発し,薬剤候補物質や有機半導体材料などの分子構造決定に成功した(ニュースリリース)。

電子線はX線に比べて試料に数万倍も強く散乱されるため,微小結晶の構造解析に利用されているが,電子回折には厚い結晶への適用の制限や,得られるデータの品質が劣るという欠点がある。

そこで研究グループは,XFEL施設「SACLA」を用いて,大きな結晶を作りにくく,かつ結晶の方位に偏りがあるなどの性質から,解析が困難だった化合物の構造を決定した。

X線の散乱が少ないポリイミド製の試料支持板の表面にさまざまな微小結晶試料を散布したものを実験に用い,試料支持板を高速で2次元的に動かしながら回転させ,径1μm程度に集光した波長0.08nmの高エネルギーXFELパルスを10μmの間隔で微小結晶に照射し,X線回折パターンを大量に集めた。

試料支持板の回転により,試料支持板に同一方向で吸着している結晶のいろいろな方向からのデータ収集が可能になった。

同じ試料について,高精度クライオ電子顕微鏡で,試料の微結晶を回転させながら電子回折パターンを集めた。XFELで得たデータは,電子線で得られた結晶格子の情報を与え,試料の構造を決定した。

XFELと電子線から得られたデータを比較したところ,XFELの方がいずれもデータの品質が高く,原子の位置の誤差が小さいことが分かった。薬剤候補物質であるトリペプトイドでは,電子回折データからは構造決定に至らなかったが,XFELデータからは構造を解くことができた。

さらに調べると,XFELでは,試料支持板を回転させながら測定することで,データ欠損領域をほぼなくせることが分かった。XFELデータの信号対雑音比は試料支持板の傾斜角にかかわらず良質なのに対し,電子回折は試料の傾斜角によって大幅に下がった。

これは,電子線の透過力が低いことに起因すると考えられ,同じ電子が試料に2回以上散乱される多重散乱や,試料との相互作用でエネルギーを失う散乱の影響が無視できなくなることによる。

構造解析に必要な試料の量は,電子線とXFELの両解析手法でほとんど変わらないが,XFELは,試料支持板に一様に分散させることで,その量をさらに減らせる可能性がある。また,結晶格子の情報を電子回折から取得することで,計算コストも大幅に下げることができる。

研究グループは,この研究成果は,有機化合物の立体構造,化学的性質,機能のより詳しい理解を進め,創薬や材料開発に役立つとしている。

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