島根大ら,DEDで形成される空孔のメカニズムを解明

島根大学,英University College London,英Rolls-Royceは,金属積層造形における空孔の生成・滞留・放出のメカニズムをX線シンクロトロンと数値シミュレーションにより詳細に明らかにした(ニュースリリース)。

近年,様々な金属部品の製造法としてその形状造形自由度の高さから積層造形(AM)が注目されている。

AMのうち,レーザー照射部に金属粉末を噴き付けて溶融・凝固させる指向性エネルギー堆積法(DED)は,レーザーで溶融した溶融池に空孔が入り込み,そのまま凝固するとそれが部材の割れなどの原因となる問題がある。そのため,空孔の起源,メルトプールでの挙動,特に滞留と放出のメカニズムの解明が必要。

研究グループは,欧州シンクロトロン放射光施設(ESRF)のX線シンクロトロン施設でメルトプールのその場観察を行なった。その結果,空孔のうち主たる割合は気流微粒化された粉末由来であること,また一部は以前の層における残存が由来であることが分かった。

また,小さい空孔が一定の時間でメルトプールから抜けていく一方で,合体して大きくなった空孔が予想に反して長く滞留することも明らかになった。

これらの挙動には,表面張力の大きさが温度によって変わることによって起こされる,マランゴニ流れが関係している。メルトプールには温度分布があるためその表面での表面張力のバランスの崩れからマランゴニ流れが誘起される。

空孔の動きはこの流れの影響を受け,条件によっては大きな空孔の上部でマランゴニ流れが蓋をする格好で浮力による上昇運動を邪魔して滞留させてしまうこと,またメルトプール深部の凝固進行領域で空孔を留めてそのまま凝固させてしまうなどの挙動が観察された。

研究グループは,独自に開発した熱流体シミュレーションプログラムにより,この実験の挙動をそのまま再現しその機構を説明することに成功した。

シミュレーション中で,実際にマランゴニ流れが誘起され,小さな空孔の動きを再現するとともに大きな空孔がマランゴニ流れによって滞留する機構も,その空孔に働く浮力・圧力・粘性せん断力を定量的に算出することで説明した。また,実験中に観察された挙動で空孔の動きが若干の振動を伴うことも説明した。

これは,DEDが粉末を噴き付けるために起こる。液体のメルトプールに融けた粉末が突入する際にメルトプール表面にインパクトを与え表面波を誘起し,それによってしばらく振動が続くことを示した。この動きも空孔の滞留と放出に大きく影響するという。

研究グループは,これらの知見は,AMによる部品製造の品質を高めることに役立つとしている。

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