OIST,網膜神経節細胞の生存に必要な遺伝子を特定

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,網膜に存在する神経細胞の一種であり,視覚に不可欠な細胞である網膜神経節細胞の生存に必要な遺伝子を特定した(ニュースリリース)。

網膜は異なる種類の神経細胞が互いに積み重なり,その間には神経細胞が互いにつながって情報伝達するシナプス層が存在する。これらの神経細胞は,光を感知する光受容体から脳の視覚中枢まで電気信号を伝達しており,このような網膜の回路が正しく配線されていなければ,視覚は損なわれる。

2000年代初頭,理化学研究所はランダムに遺伝子変異を導入した数百のゼブラフィッシュ胚を作製し,これらの変異のうち1つが,内網状層とよばれる網膜のシナプス層に異常をもたらすことを見出した。OISTでのその後の研究により,この変異はstrip1遺伝子に生じていることを確認した。

この網膜の異常の背景にある原因を明らかにするため,研究グループは,内網状層の神経回路を形成している3種類の神経細胞(網膜神経節細胞,アマクリン細胞,双極細胞)を標識して,strip1遺伝子に変異を導入した場合にこれらの細胞がどのように発生するのかを調べた。

その結果,3種類の神経細胞はすべて形態および位置に異常をきたすものの,死滅するのは網膜神経節細胞だけだと判明した。この細胞が死滅して他の神経細胞が置き換わり,層構造に乱れが生じた。つまり,Strip1は神経節細胞の生存,そして内網状層の正しい形態の維持に必須となる。

その根底にある仕組みを調べたところ,Strip1は細胞死に関連するタンパク質であるJunの活性を抑制することが判明した。Junとその経路は神経細胞にストレスが加わったときに誘起される。十分な量のJunタンパク質が活性化されると細胞は死滅する。

アポトーシスと呼ばれるこの細胞死のプロセスは,ストレスを受けて修復不可能となった細胞を除去する機構だが,網膜神経節細胞は,正常な発生段階において極めて長い視神経を形成する際に,強い代謝ストレス下にあると考えられる。そのため,網膜神経節細胞をJunアポトーシス経路から保護するために,Strip1が必要だと考えられるという。

さらに,Junとその経路は,緑内障患者における網膜神経節細胞の死滅に関与することが知られている。緑内障は通常,眼圧の上昇によって視神経が損傷され,網膜神経節細胞が強いストレスを受けてJunが活性化されることによって生じる。

研究グループは今後,哺乳類の緑内障モデルにおいてStrip1がJunを抑制できることが明らかとなれば,緑内障の新しい治療法につながるとしている。

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