岡山大学の研究グループは,6世紀後半の岡山県赤磐市鳥取上高塚古墳の墳丘について,レーザーシステム搭載ドローンでの測量により墳丘地表面の三次元データを取得し,墳丘の実態を初めて詳細に明らかにした(ニュースリリース)。
岡山県赤磐市鳥取上高塚古墳は,長さ15m前後の大型横穴式石室を有する。一方,この古墳の形と大きさについては,6世紀後半の備前地域最大の前方後円墳(墳丘長67mまた
は75m)か,あるいは直径約30mの円墳か,いずれかの可能性が指摘されてきた。
一方,この古墳の墳丘に関する詳細な測量図面がないため,古墳の形と大きさに関する具体的検討,ひいてはこの古墳の歴史的評価についての議論も難しい状況だった。そこで,この古墳の歴史的位置づけを行なう上でも,墳丘測量図の作成・検討が必要だった。
研究は,鳥取上高塚古墳の詳細な墳丘測量図や立体図を初めて提示した。測量では,大型ドローンとレーザーシステム(LiDAR)を使って行なった。ドローンによるレーザー測量は,地面を一点ずつ計測する従来の測量方法に比べ,現地測量に要する時間が飛躍的に短くなるメリットがある。反面,遺跡を観察する時間も同時に減少するデメリットもあった。
今回,測量結果をもとに現地での古墳の観察を加えることで,この測量方法の精度を確認した。結果,この古墳の形は前方後円墳,大きさは75m前後と推定した。つまり,80年代後半頃の見解と一致し,90年代以降,現在の有力説であった67mの前方後円墳説よりも大きな古墳となることが判明した。
このことは,鳥取上高塚古墳が6世紀後半において,備前最大であるだけでなく,備後の福山市二子塚古墳(前方後円墳・68m)よりも大きく,備中の総社市こうもり塚古墳(前方後円墳・約 100m)に次ぐ第2位の墳丘規模となることを意味する。
また,備前エリアに位置するこの古墳と,備中のこうもり塚古墳との間の格差が縮まることにより,当時の吉備における地域の関係,さらには列島史における吉備のあり方を考える手がかりとなるという。
個々の遺跡の歴史的意義の研究は,地域社会における遺跡の保存と活用の基礎となる。研究グループは,古墳の墳丘測量で得たデジタルデータや測量図は,貴重な文化財としての古墳を後世に継承する上で有用なものだとしている。