昭和電工は,半導体材料の最適な配合探索にかかる時間を,量子コンピューティング技術を活用し,従来の数十年以上から数十秒に大幅に高速化可能であることを実証した(ニュースリリース)。
半導体材料には樹脂やフィラー,添加剤など多数の材料をさまざまな比率で配合しており,それらの種類と量の配合を最適化することにより高性能化を図る。
しかし,同社が取り組んでいる開発テーマの配合の組み合わせは,理論上1050を超える膨大な数が存在しており,従来の人工知能(AI)技術を用いて探索した場合,最適な性能の提示を得るには数十年以上が必要だった。そのため理論上の組み合わせのうちの一部だけを抽出し,最適な配合の組み合わせを探索していた。
こうした探索に要する時間の短縮のため,同社は富士通の高速情報処理技術である量子インスパイアード技術(量子効果そのものは利用していないが,量子技術に着想を得た,複雑な計算を高速に処理できる技術)「デジタルアニーラ」に注目。
「デジタルアニーラ」を活用するには統計力学の解析手法であるイジングモデルでの入力が必要で,同社は,材料の複雑な配合条件から半導体材料の特性を予測できる独自開発したAIモデルを,イジングモデルで表現することに成功した。
これにより同社のAIモデルと「デジタルアニーラ」との連携を実現し,配合の種類と量を限定した条件下で探索を行なう従来のAIモデルのみを活用した場合と比較して,探索時間を約72,000分の1の,数十秒に短縮でき,かつ半導体材料として約30%高い性能を実現する配合を得ることに成功した。
この成果は,同社が掲げている「考える化学」を「混ぜる化学」に適用した事例になる。今後この成果をさまざまな素材開発に応用し,開発を加速するとしている。