東工大ら,小惑星の起源を赤外線観測などで推定

東京工業大学,海洋研究開発機構(JAMSTEC),米カリフォルニア工科大学,神戸大学は,太陽系の小惑星帯の観測と理論計算を組み合わせることで,太陽から遠く離れた極寒の環境で誕生した天体が小惑星帯に数多く存在していることを突き止めた(ニュースリリース)。

小惑星リュウグウに代表される「C型小惑星」と呼ばれるものは,水や有機物を含む隕石(炭素質コンドライト隕石)に近い組成を持つとされ,地球の大気や海,生命の材料物質の起源と考えられている。そのため,C型小惑星がどこで,どのように誕生したのか,注目を集めている。

研究グループはまず,日本の赤外線天文衛星「あかり」が過去に取得した66の小惑星の分光データから,データの信頼性等を踏まえながらC型小惑星19天体と,C型小惑星より始原的と考えられるD型小惑星2天体,合計21天体の小惑星のデータを抜粋して,それらを詳細に解析した。

その結果,解析を行なった小惑星の約半数の天体において,その表面にアンモニアを含む層状珪酸塩鉱物の存在が確認された。地球上に設置された望遠鏡等による既存の観測では地球大気の影響を大きく受け,正確な赤外線分光データを得ることができなかった。したがって,今回捉えられたアンモニアを含む層状珪酸塩鉱物のシグナルは宇宙空間からの観測が可能になったことで初めて見出されたものだという。

次に,理論計算によって,小惑星がアンモニアの氷とドライアイスを含む条件下で誕生した場合にのみ,アンモニアを含む層状珪酸塩鉱物が生じることを突き止めた。これらの物質は現在の太陽系では土星軌道以遠の環境に相当する極寒の環境でのみ安定であることから,小惑星は小惑星帯からはるか遠方で誕生した後に9億kmにも及ぶ大移動をしてきたことを示唆している。

2020年12月に日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が地球近傍のC型小惑星リュウグウの試料を地球に持ち帰った。また,米の小惑星探査機も同じく水や有機物を豊富に含んでいると思われる小惑星ベンヌの試料を2023年に持ち帰る予定となっている。

研究グループは,これらの小惑星の試料において,アンモニアを含む塩や鉱物が発見された場合,今回の研究の結論を裏付けるものになると期待している。

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