早大ら,光で有機結晶が超弾性変形する機構を解明

早稲田大学,茨城大学,芝浦工業大学の研究グループは,光によって光異性化と相転移という2つの現象を発現するサリチリデンアミン結晶のねじれ変形を観察およびシミュレーションし,光で超弾性変形が起きることを初めて見出した(ニュースリリース)。

有機結晶に力を加えると超弾性変形という特殊な変形が誘起される場合があり,有機結晶における新しい力学応答として注目を集めている。

研究グループは,光によって起こる特異な相転移現象を「光トリガー相転移」と名付けており,光トリガー相転移によってサリチリデンアミン結晶がねじれを伴った複雑な変形挙動を示すことが分かっていた。しかし,変形挙動が複雑であるため定量的な変形の評価や変形機構の詳細理解には至っていなかった。

今回,サリチリデンアミン結晶のねじれ変形を解析し,変形機構を詳細に解明することを目指した。顕微鏡で結晶の先端方向から変形挙動を観察することで,変形を「ねじれ角」と「変位」に分解して評価した。ねじれ変形の発生機構を理解するために変形シミュレーションを行ない,光照射後1秒以内に起こる素早いねじれ変形をシミュレーションで再現することができた。

また,変形自体は光照射下で5~10秒で定常状態となり,光照射を止めると約2分で元の形状に戻るという繰り返し性がある。用いた光は波長365nmの紫外光であり,この波長の光でサリチリデンアミン結晶の光異性化反応が起きることが分かっている。変形シミュレーションおよび顕微鏡での相界面の観察により,光トリガー相転移によってサリチリデンアミン結晶で超弾性変形が起きることが明らかになった。

また,結晶中では光異性化反応によって発生する応力と,相界面によって発生する応力がある。このうち,相界面による応力が結晶構造の動的挙動に大きく影響していることがX線回折を利用した解析により明らかになった。

力を加えることで超弾性変形が誘起されることはこれまで知られていたが,今回,サリチリデンアミン結晶では光によって超弾性変形が発生することが分かった。これは,ひとつの結晶でねじれ変形と超弾性変形が起きるという特異な光応答現象と言うことができる。

研究グループは,このような光応答性結晶材料により,光によって操作できるセンシングやスイッチング,メモリ,アクチュエータの開発につながる可能性があるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 芝浦工大など、不可視光を可視化する有機結晶材料を開発

    芝浦工業大学、早稲田大学、東京科学大学は、人の目には見えない紫外光や近赤外光を、色として可視化できる新しい有機結晶材料を開発した(ニュースリリース)。 不可視光である紫外光(<400nm)や近赤外光(>800nm)は、エ…

    2026.01.29
  • 千葉大ら、光の強さでナノ材料の形を自在に制御

    千葉大学、東京科学大学、生命創成探究センター、パリ=サクレー大学、理化学研究所、名古屋大学は、光に反応して形や色が変化する分子「フォトクロミック分子」が自己集合して作られるシート状の構造「二次元ナノシート」に強度を変えて…

    2025.11.21
  • 東北大ら,有機結晶の磁気的性質と起源を光で解明

    東北大学,高輝度光科学研究センター,関西学院大学,東北大学は,新種の磁石の候補とされる有機結晶に,新たに求めた光に関する一般公式を適用し,その磁気的性質と起源を解明した(ニュースリリース)。 磁石に光を当てると,どんな磁…

    2025.07.16
  • 理研,テラヘルツ波による細胞膜の相転移誘起を発見

    理化学研究所(理研)は,テラヘルツ照射が細胞膜の相転移を誘起する現象を発見した(ニュースリリース)。 THz波はマイクロ波やミリ波よりも高周波数の電磁波であり,次世代無線通信(6G)などの産業利用が期待されている。また,…

    2025.05.21
  • 早大,AIで光駆動有機結晶の発生力を3.7倍向上

    早稲田大学の研究グループは,機械学習を使って光駆動有機結晶の発生力を向上させることに成功した(ニュースリリース)。 光駆動有機結晶の発生力を制御することは,実用化に向けて重要。発生力は結晶の物性,サイズ,光強度といった複…

    2025.04.04

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア