京大ら,早産児の注意切替をアイトラックで調査

著者: sugi

京都大学と東京大学は,修正齢12ヶ月の早産児と満期産児を対象に,アイトラッカーを用いた注意機能を評価する課題を行ない,修正齢12ヶ月時点において,一部の早産児(在胎週数32週未満の児)では注意を切り替える機能に弱さを抱えていることを発見した(ニュースリリース)。

これまで研究グループでは,早産児・低出生体重児(以下,早産児)の一部は,乳児期に社会的に重要な刺激に対する注意が満期産児と比べて弱いことなどを明らかにしてきた。

このような発達上の問題の背景には,注意を制御する能力(目標に応じて注意を維持・変更し,不要な注意を抑制するなどの能力)が関与している可能性があり,早産児ほど,学齢期以降に注意に関わる問題が生じやすく,とくに,注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害と診断されるリスクが高いことが報告されている。

しかし,注意を制御する能力の弱さがすでに乳児期に確認されるのか,さらには,発達初期の注意機能が後の認知機能や社会性の発達とどのように関連するかについては,わかっていなかった。

研究は,早産児27名,満期産児25名を対象として行なった。生後12ヶ月の時点(早産児,満期産児ともに修正齢)で,アイトラッカーを用いた反応シフト課題により,注意を切り替える機能を定量的に評価した。

さらに,修正齢18ヶ月に達した時点で認知機能や言語・社会性発達を評価した。また,行動のチェックリストの保護者の回答から,日常場面での注意や行動についても評価した。

その結果,以下の3点が明らかになった。
① 修正齢12ヶ月時点:在胎32週未満で出生した早産児は,在胎32-37週未満の早産児や満期産児に比べて,以前のターゲットの位置に対する固執的注視を抑制する(注意を切り替える)機能が弱い。
② 修正齢18ヶ月時点:在胎32週未満で出生した早産児は,他の児に比べて,認知機能や社会性発達が遅く,日常場面でも行動の抑制に困難を抱える傾向がみられる。
③ 修正齢12ヶ月時点で固執的な注視を抑制する傾向が低い乳児ほど,修正齢18ヶ月時点での認知機能や社会性発達が遅く,日常場面でも注意の切り替えに困難を抱える傾向がみられる。

以上の結果は,周産期に経験する環境の差異が,乳児期の注意を切り替える機能の発達に影響すること,さらに,この時期の注意を切り替える機能の弱さが,幼児期以降の認知機能や社会性発達のリスクを予測する可能性を示すもの。研究グループは,注意の切り替えの弱さに関与する神経メカニズムの詳細な解明が待たれるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 国立遺伝学研究所ら,網膜内アミノ酪酸の機能を解明

    国立遺伝学研究所,米カリフォルニア大学サンディエゴ校は,網膜でのGABA(ɣ-アミノ酪酸)信号の機能的作用を明らかにした(ニュースリリース)。 ニューロン間での情報のやり取りは,多種多様な神経伝達物質が担う。とりわけGA…

    2025.04.21
  • OIST,錐体細胞が規則的なパターンを作る機序を解明

    沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,ゼブラフィッシュの網膜内の色を感知する細胞において,Dscambと呼ばれるタンパク質が “自分の仲間を避ける自己回避” をすることで,細胞同士が最適な間隔を保ち,最適な…

    2025.03.27
  • 豊技大ら,肌の乾燥に寄与する視覚的手がかりを解明

    豊技大ら,肌の乾燥に寄与する視覚的手がかりを解明

    豊橋技術科学大学,九州大学,化粧品・医薬品を扱うピアスは,肌の潤い・乾燥に寄与する視覚的手がかりを明らかにするため,どのような画像操作をすると肌の視覚的潤い感が変化するかを心理物理実験によって検証し,肌の明るさの高空間周…

    2024.12.27
  • 豊技大,視覚的な光沢感と瞳孔反応の関係を解明

    豊橋技術科学大学の研究グループは,視覚的な光沢感と瞳孔反応の関係を明らかにした(ニュースリリース)。 人間の目に入ってくる光量を調節する器官である“瞳孔”は,物理的に明るいものを見ているときに小さくなり(縮瞳),暗いもの…

    2024.04.18
  • 電通大,タンパク質視覚ニューロンで明暗錯視を検出

    電気通信大学の研究グループは,ヒトの目のように錯視する機能をもつ視覚ニューロン素子を開発し,画像の輪郭検出と明暗錯視検出を実現した(ニュースリリース)。 視細胞は,光刺激によって興奮すると同時に隣接した細胞を抑制する「側…

    2023.12.27
  • 慶大,光遺伝学に視覚再生と網膜変性の保護効果確認

    慶應義塾大学の研究グループは,名古屋工業大学創出した「キメラロドプシン」という独自の光センサータンパク質を用い,光遺伝学(オプトジェネティクス)を利用した高感度な視覚再生効果及び網膜変性の保護効果を世界で初めて,マウスで…

    2023.10.17
  • 産総研,視覚から物体間に働く力を想起するAI開発

    産業技術総合研究所(産総研)は,視覚情報から物体間に働く力を想起するAI技術を開発した(ニュースリリース)。 人間は物体にかかるおおまかな力や物体の柔らかさなどを視覚のみから経験的に推論し作業することができる。例えば崩れ…

    2023.10.04
  • 島根大ら,生体の視覚機能を模倣した撮像技術を開発

    島根大学,情報通信研究機構(NICT),電気通信大学は,生体の視覚機能を模倣した撮像技術(視覚センサー)を開発した(ニュースリリース)。 研究グループは,バイオ材料を用いた,視覚センサーなどの視覚情報デバイス(素子)の構…

    2023.09.27

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア