京大ら,太陽光でCO2排出最小の水素製造法を考案

京都大学,九州大学,韓国釜山開発機構は,「森」と「太陽」という自然界に豊かに存在する天然資源から水素を製造可能な革新的なプラントの概念設計に成功した(ニュースリリース)。

次世代エネルギーの旗手として注目される水素だが,その大部分が水電解または化石燃料改質により製造され,製造時のCO2排出が無視できない。カーボンゼロ社会の実現に向け,より低炭素な水素製造法の研究が世界的に行なわれていた。

従来,太陽は日照が不安定であり,水素製造の駆動には不適当と思われてきたが,研究グループは今回,水素製造におけるCO2排出量低減に対し「森」と「太陽」という自然界に存在する2つの資源に着目した。

研究の結果,デュアルチャンバー流動床ガス化炉という新たな装置を導入することにより,太陽熱を用いても安定的に木質チップをガス化,水素製造が可能となることを見出した。

今回初めて概念設計に成功した太陽熱による安定水素製造プラントには,SABI水素プラント(太陽駆動先進バイオマス間接ガス化 / Solar-Driven Advanced Biomass Indirect-Gasification)と名付けた。ここには,寂びある枯れた木から価値ある水素を作り出すという美意識が込められているという。

このSABI水素プラントは,「森」と「太陽」という天然資源から水素を生み出すものであり,非常に低いCO2排出量が見込まれるという。そこで研究グループは,厳格な工学評価に基づき,国際的な標準評価手法であるReCiPe2016によるライフサイクル環境インパクト評価を実施した。

その結果,SABI水素プラントのCO2排出量は水素製造1kgあたり1.04kgと試算された。これは,現在評価されている既存水素製造法のいずれよりも小さな値となる。

SABI水素プラントは,自然に肥沃に存在する「森」と「太陽」から,ほぼゼロに近いCO2排出量で水素を製造する新しい可能性を示した。カーボンゼロ社会の実現に向け水素エネルギーへの注目が高まる中,研究グループはSABI水素プラントを有力な新たな選択肢と捉え,今後実証へと研究を進めるとともに,産業界の助力を得ることで,5年以内の商用化を目指したいとしている。

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