熊本大ら,ノイズ耐性の高いミクロ構造解析法開発

熊本大学,筑波大学,科学技術振興機構,あいちシンクロトロン光センター,東京工業大学,日本原子力研究開発機構,量子科学技術研究開発機構,九州シンクロトロン光研究センター,東京大学,物質・材料研究機構は,広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルから材料のミクロ構造を解析するため,電子波多重散乱理論に基づいたスパースモデリングとベイズ推定を組み合わせたノイズ耐性の高い新解析法を開発した(ニュースリリース)。

デバイス材料のミクロ構造の解析ではEXAFSスペクトルの計測が行なわれる。しかし,薄膜試料ではX線の吸収強度が弱いためEXAFSのS/N比が小さく,ミクロ構造の高精度な解析は困難だった。

そこで研究グループは,まず複素Hedin-Lundqvistポテンシャルによる光電子波の2体多重散乱理論に基づく基底関数を用いて,EXAFSデータのスパースモデリングを行なった。さらに,その解析結果から,ベイズ自由エネルギーを小さくするように最適化することでデータに重畳するノイズを推定し,解釈しやすい動径分布関数を得る方法を開発した。

多重散乱理論では,元素種によって光電子波の散乱振幅が異なることと<散乱に伴う光電子波の位相変化・振幅減衰を量子力学に基づいて評価することから,原子間距離を正しく推定することが可能となった。

この方法の有効性を示すため,光スイッチ材料として期待されるイットリウム酸水素化物エピタキシャル薄膜のEXAFS解析に適用した。その結果,イットリウム原子と酸素原子を識別して,それぞれの動径分布関数を正しい原子間距離で推定することに成功した。なお,EXAFSスペクトルは大型放射光施設SPring-8のビームライン(BL14B1)にて測定した。

計測データでは,原子間距離は,フーリエ変換等の従来法と異なり原子間距離を正しく評価できていることから,イットリウムの最近接原子である酸素との原子間距離と,第二近接原子のイットリウム原子との原子間距離の比から,イットリウム周りで酸素原子が四面体配位していることが推定された。

このように,開発したEXAFS解析法は事前に結晶構造の情報を必要とせず,元素種の情報だけで解析できる。また,体多重散乱理論に基づくことから,原子間距離を正しく推定でき,ベイズ推定の枠組みに基づきノイズ耐性が高いの特徴を持つことから,従来法では困難であった薄膜試料中の局所構造の推定が可能となる。

研究グループはこれらにより,従来法では困難であった薄膜試料中の局所構造の推定が可能となることから,新たな研究の発展が期待できるとしている。

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