京産大ら,新星爆発のリチウム生成量に多様性発見

京都産業大学と国立天文台は,国立天文台すばる望遠鏡による,新星「いて座2015 No.3(V5669 Sgr)」の観測から,史上8例目となるリチウム生成の現場をとらえることに成功した(ニュースリリース)。

宇宙における元素の起源と進化を知る上で欠かせないリチウムは,ビッグバンにより合成されたことはわかっていたが,現在の宇宙に存在するリチウムの量の大部分(約9割)は,これだけでは説明できない。そのため,星間空間や恒星の中,新星・超新星爆発などさまざまな条件でも,リチウムが生成されるのではないかと推測されてきた。

2013年に現れた新星「いるか座V339」をすばる望遠鏡の高分散分光器(HDS)で観測した結果,多量のリチウムが新星爆発で作られ,宇宙に放出されていることが初めて観測的に明らかになり,その後も,同装置によって続例が報告されている。

今回,研究グループは,2015年に出現した新星「いて座V5669」をHDSで観測し,史上8例目となる新星でのリチウム合成現象を捉えた。この検出では,推定したリチウム生成量がこれまで調べられた新星での生成量の数パーセントしかなく,新星によるリチウム生成量に100倍程度の幅があることが明らかになった。

これまでの観測からは,ビッグバン以降に作られた銀河系のリチウムの大部分を新星爆発で説明できていたが,リチウム生成量が少ない新星も存在することが今回わかったことにより,超新星などの他の天体も宇宙のリチウムにある程度寄与している可能性が出てきた。

一方で,物理過程を丁寧に再現している新星爆発のシミュレーションは,実際に新星で観測されたリチウム生成量を十分に説明できていない。今後は,リチウム生成が捉えられた新星の物理情報を詳しく調べることで,リチウム生成量の多様性が生じる要因と,銀河系の元素組成の進化の理解が進むと期待されるという。

今回検出に成功したベリリウムの吸収線は,地球大気による吸収の影響を受けやすく,地上からの観測が極端に難しい紫外線の波長にある。そのため,この吸収線の観測では,空気が薄いマウナケアの山頂域にある大望遠鏡と,紫外線波長でも高い感度を持つ観測装置,つまり,すばる望遠鏡とHDSが必要となる。

今回の報告は8例目だが,最初の発見報告を含めそのうちの4例はすばる望遠鏡とHDSによるもので,特に北半球から観測できる新星でのリチウム合成の観測はすばる望遠鏡の独壇場となっているという。

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